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2013年12月26日 (木)

魏志天問 5 一大國

                        2013-12-26 21:30:00
 以下の記事は、魏志倭人傳に関する素人考えの疑問を並べていくものです。

 天問5は、
  「一大國」は、天國ではないか
 と言うものです。

 以下、半分冗談の話題なので、気軽に目を通してください。

 それにして、今回は、縦書きで読んで欲しいものです。

 一大國は、もともと自称「天國」ではなかったか、と勝手な発想を持っています。縦書きすれば、一目瞭然。魏志の誤記とでも言いたくなるところです。天國とは、空の天国と言うより、あま國、つまり海國の趣旨です。

 中国では、空と大地は溶け合うことなく「天地玄黄」(天は、玄(くろい)、地は、黄(きいろ))の世界であり、黄土平原上の漆黒の天は、地と隔絶した至高の存在です。これは、海洋世界の、青い「そら」と「うみ」が彼方で溶け合う世界とは、世界の見方、世界観が異なります。

 多竹木叢林。有三千許家。差有田地、耕田猶不足食、亦南北巿糴。

 一大國は、對海國の「無良田」と比べると耕作地に恵まれていたようですから、早くから、水田耕作の恩恵を受け、海産も併せて、食料に恵まれたことから、早くから人口が増加し、それを生かして積極的な交易を行い、天國として指導的な立場に立っていたものと思います。この点は、島の占める場所の利もあり、指導が君臨に近いものになった可能性があります。

 魏使は、軍事官僚なので食料輸入のために南北に貿易したと納得していますが、食料輸入だけでは慢性赤字で貿易が維持できないのです。

 海産物やタケノコが豊富に採れるので、食料(穀類)輸入の対価として差し出せば、輸出入が均衡して、貿易が維持しやすかったでしょう。

 また、食料以外の南北の物資流通の仲介利益、あるいは、出入りする交易船の入港停船の徴収も、貿易均衡に貢献していたものと思います。これなら、長年にわたって、維持可能です。

 かくのごとく、天國は南北巿糴の要路を占めて、ある意味、頂点で君臨していた様子があるため、天國が、軍事力で他国を支配したとみる論客もあるようですが、海洋貿易国家は、周囲の諸国と平和な関係を保たなければ生きていけません。自給自足できないから、貿易に活路を求めてきたのであり、南北いずれかの側から海上封鎖でもされれば、たちまち飢えてしまうのです。食糧自給が困難で貿易立国している国が軍事行動に出るのは、長期にわたって維持できない生き方なのです。

 ところが、中国の出先である帯方郡と接触すると、あまくにを天國と書いて示す必要があり、とたんに、物議を醸したものと思われます。

 中国思想で行くと、「天」は至上の神であり、中国の皇帝は天子であるから、天國は皇帝の上に立つことになります。さすがに、それは不遜で、撲滅されかねないと言うことで、「天」を「一」と「大」に分けた一大國として討伐の窮地を逃れたのではないでしょうか。ひょっとすると、周辺国には、「天國」(あまくに)あらため、「大國」(おおくに)と称したのかも知れません。

 そして、諸兄の見解にもあるように、中国の視点から見ると、海峡の一島嶼が「一大國」と言うのも不遜であり、更なる改名をさせられたのではないでしようか。

 いつの頃か、そうした元々の意味は忘れられ、多分数世紀を経て、現地名と思われる「いき」に吸い込まれるように、字面の似た一支国から遠い連想で壱岐(いき)と変遷したようにも思えます。

 それにしても、一大國は、一支國の誤記に決まっているという「定説」は、早計の決め込みかと思われます。
以上

追記 2014年1月9日
 本件主旨に関しては、「古代に真実を求めて」 古田史学論集第十六集 所載の講演録
 愛知サマーセミナー (2012年7月15日開催) 「真実の学問とは」の質問1
 で言及されていて、古田氏から、以前から聞いている旨回答されていますが、古田氏のこれまでの論考では言及されていないように思われます。
 いわゆるFAQの類いかも知れませんが、見る限りでは特に言及していないので、折に触れ、事情に疎い「新入生」が持ち出す質問と思われます。
 とはいえ、「一大國」から連想される「一大率」は、倭國の支配構造を推定するのに影響の大きい命名と思われます。また、「一支國」と改訂している紹興本に、一段の不審を投げかけるものと思われます。吟味する価値は、あるのではないでしょうか。

 それにしても、数詞の場合に大字の「壹」でなく「一」を採用するのは当然として、大事な国名に「一」を採用することには、かねてから疑問を感じているのです。
 まして、「一支國」と改訂してしまうと、列記されている「巳支國」、「郡支國」、「支惟國」などと同様の主旨であり、陳腐になっているように感じるのです。
 本論は、素人考えを書き連ねるのが本分なので、特に追記するものです。

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