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2014年5月 3日 (土)

13. 倭國亂 - 古代戦国ロマンの誕生

                           2014/05/03 補正2020/12/18
 其國本亦以男子爲王、住七八十年、倭國亂、相攻伐歷年
 魏志倭人傳は、倭國が乱れ、相争うのが年が変わっても収まらなかったと書いているのです。諸國が、政権を目指して争ったものの、卑彌呼の共立で収束したことから、あくまで内乱であり、政権が変わっても、倭國の成り立ちには変化がなかったことになります。

*笵曄「後漢書」談義
 これに対して、陳寿の百五十年後に「後漢書」を編纂した笵曄は、東夷列伝に於いて、「桓、靈閒,倭國大亂」と物々しい書き方にしています。独自の倭國観で、史料の紙背を見通そうとしていたのでしょうか。以下、模索してみます。

 笵曄が属していた劉宋(南朝の宋王朝であるが、「南宋」とは「絶対に」言わないのに注意)では、西晋滅亡の際に、東晋に追随して南方に退避した職業軍人常備軍が、中原回復を唱えて北伐することもあり、また、南朝の国勢に不釣り合いな強力な軍事力があだとなった王族内の権力争いによる内戦を経験している笵曄の観点に従うと、倭國の乱は「大乱」と見えたのでしょう。

*「周旋」談義
 魏志倭人傳の国数、道里の記事を、漢里(普通里)で読み、「周旋」を、領域周囲の長さと取ると、「周旋五千里」は一辺五百㌔㍍方形という、言うならばもう一つの中原であり、そこに三十諸国の逐鹿の戦いが展開されているという「戦国ロマン」が、笵曄を魅了したので、「倭國大亂」と粉飾してしまったのでしょう。范曄を信じ切って、この戦国ロマンに同調している諸賢が少なくないように思われます。
 いや、後漢書列伝で、後漢末期の英傑である孔庸の一代記を画くに際し、少年時代の挿話を引用していますが、原史料に忠実と思われる袁宏「後漢紀」が名家二家の交流を「周旋」と書いているのに対して、言葉を変えているのです。



 また、笵曄の倭國観は、後漢書倭傳にも影を落としていて、何となく、後漢末期の漢中に勢力を持った五斗米道集団の総帥 張魯やその母に、卑彌呼像を重ねる戦国ロマンが感じられます。

 交通輸送手段は未発達であり、文書行政も形成されていない未熟な時代背景では、狭い範囲で緩やかな同盟関係によって、倭国諸国の連帯が、形成されるものであり、それは、長期にわたって維持可能な、望ましい国際関係と言えます。

 孫子がいなくても、当時の倭國で、乱世戦国状態を引き起こす多国間戦争は、最悪の手段であることは、理解されていたものと思われます。

 何しろ、九州北部にひしめき合っている小國群ですから、最終戦争が開始すれば、数年を経ずして決着がつき、勝者、敗者共に労働力の減少、低下という大打撃を受けて飢餓状態に転落し、域外勢力が漁夫の利を得ることになっていたでしょう。

 幸い、諸國は長続きする平和を求めて、女王を共立し、その仲裁に皆服することで矛を収めたのです。

以上

 

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