17. 婢千人 - ペーパーレス社会
「以婢千人自侍、唯有男子一人給飲食、傳辭出入。」
邪馬壹国に女王の王宮があって、1000人の公務員が雇われていたということですが、文書のない時代で、伝言、使い走りに結構人手がかかっていたことでしょう。また、王宮内で消費するの食料や日用品の買い物にも、人手が必要だったでしょう。
中国の王宮には官奴という制度があって、老齢の官奴の働きぶりが痛々しいから、65歳定年を適用して、官奴から解放したらどうかと建言した人があったとのことですが、官奴は、衣食住の保証された被雇用者であり、老境での解放は、実質上、解雇、失業という悲惨な境地となるのです。何しろ、自前の耕作地がないから、官奴から解放されたら、喰っていけないのです。
と言うことで、直接農作業に貢献しない人員が千人いるというのは、米など基幹作物の収量が高いと言うことであり、東夷の国家にして、なかなかの偉容です。
もちろん、王宮には、献上品に列記されているような「倭錦、絳青縑、緜衣、帛布、丹木、犭+付、短弓矢」などの美術工芸産品を、国王のために制作する「尚方」も備わっていたことでしょうが、これが、「婢」に含まれていたかどうかは、知るすべがありません。
これだけの人員が住み込みだとしたら、全員に衣食住の保証ができるというのは、そこそこの権威のある「国家」と言うことになるでしょう。通いなら、住は軽減されますが、それにしても、交通機関のない時代に、数百人が王宮に通うというのも、壮大なものです。結構、首都の表通りは、整備されていたと言うことでしょうか。
とはいうものの、文書国家の形成以前で、書類と言うものがないから、膨大な文書の往復がなく、書類保管庫もなく、書類廃棄もなく、新聞、雑誌、書籍がなく、誠に静かな社会であったようです。
国王/国主も、稟議上申書の山を読解して、裁断を書き下す膨大な執務がなく、朝議は、毎日短時間で終わっていたはずです。
以上
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