23. 古代国家史疑 - またもや余談として
ここでは、具体的な文献や遺物に基づかない所感を連ねることにします。
古代史の権威とされている(著書を刊行している)諸賢には、3世紀初頭当時、すでに現在の西日本を包含する古代国家が成立していたとの歴史観を持っている向きがあるようです。
特に顕著なのは、三世紀ないしそれ以前に、現代で言う「近畿」に古代国家が成立していて、遙か九州北部まで支配していたという歴史観です。(「近畿」と「畿内」は、帝都周辺領域という意味であって、遙か古代の地勢に適用するのは時代錯誤なのですが、仕方なく使用しています。)
こうした手前味噌の古代史観で、文献、遺跡、遺物の時代解釈を煮染めていくような議論には、どうにもついて行けない感じです。
その様は、「ピンポンパン体操」(阿久悠作詞)のトラのプロレスラーを思い出させます。元々、体に合わない「しましまパンツ」ですから、ずり上げて履いても、試合中にずり下がってきます。それを、手づかみでずり上げたとしても、すぐずり下がるのは、子供の目に止まっています。身に合ったパンツに仕立て直したらいかがでしょうか。
さて、当方の見るところ、魏志倭人傳は、辛うじて、九州北部に散在する、慎ましい村落「国家」連邦を書き残しています。
成文法も暦法もなく文書行政が形成されていない、交通手段が整備されていない、君主の権力が確立されていない、前「古代」的国家の姿が描かれているのです。
時代インフラ、つまり、その時代の社会基盤に見合った国家形態です。
三世紀に古代国家を見ている古代史家は、SFで言う chronoclasm (時間錯誤)に陥っているように思います。
以上
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