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2014年5月14日 (水)

24. 鉄と紙 - 古代国家の礎

 引き続き、具体的な文献や遺物に基づかない所感を連ねることにします。

 文書による行政インフラの整備は、一つには、紙や筆墨の大量普及によるものであり、一つには、遣唐使によって唐王朝諸制度を輸入したことによって始めて整備できたことによるものであり、その背景として音訓併用の漢字の使いこなしを含めて、年月を重ねた膨大な学習の積み重ねの成果が求められています。

 これに加えて、日本列島で、古代の産業革命とも言うべき変革が起こったことも背景にあります。

 変革の原因は、鉄器の普及です。

 鉄器は、武器として強力であることはいうまでもありませんが、鉄製農具は、農耕の効率、作業性を飛躍的に向上させます。

 鉄製農具を使用すれば、既存の農地の耕作が迅速かつ手軽にこなせるだけでなく、新田の開墾に於いて、樹木の伐採、岩石の除去、そして、灌漑水路の開削と、食糧増産に繋がる変革をもたらします。

 食料たる米は、他の穀類に比べて格段に反収量が多い上に、このようにして増産、備蓄されると、多数の農民兵を動員した、大規模かつ長期間の軍事活動を可能とするとも言えます。

 また、道路整備においても、道路の開削整地、あるいは、木橋の敷設など、鉄製工具があって始めて実現するわけです。

 土木工事の人海戦術というものの、木製農具を振りかざしていては、とても、大規模なインフラ整備は起こらないのです。

 古代人は、鉄製兵器作りに専念していたのではないでしょう。

 古代ローマは、ギリシャ文明を学んだとは言え、ローマを起点とする舗装道路網を形成することにより、都市国家分立のギリシャとは異なり、統一国家を形成したのです。

 一私人の所感ですが、古代国家は鉄と紙の上に築かれたのでしょう。

 三世紀に古代国家を見ている古代史家は、SFで言う chronoclasm (時間錯誤)に陥っているように思います。

以上

 

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