今日の躓き石 「経験値」
2014/09/18
毎度の毎日新聞ネタであるが、長年の愛読者の「鞭」入れである。
それにしても、今回は、おそらく、編集部の赤鉛筆の校正の入らない記事ではないかと思う。将棋A級順位戦の観戦記である。
気に障ったのは、まずは、一方の対局者が新境地を確立しようとしたリーグ初戦の敗因を「経験値」の不足か、と言ってのけたことである。
これが、トップ棋士同士での「実戦経験」の不足というなら、少しはわかるが、「経験値」と言われると、そんなPCゲームでは、戦いの度に伸びていく1次元の数値で、トップクラスの棋士の内部に蓄えられる知見は、数値化できるものではないと思うのである。
経験から得られるものは、奥行きもうねりもある、不定形のものである。
また、棋士の経験には、「実戦経験」以外に、自主的な研究の蓄積もあれば、研究会対局の経験もあるだろうに、それを小賢しい観戦記者に、準備不足、経験不足でしたね、と言われてはたまるまい。トップ棋士は、そんなところに敗因を求めるものだろうか。
誰が考えても、年間十局しかないA級順位戦の場で、前名人を相手にすると言うことは、ここで負ければ名人挑戦が大きく遠のくことは、自明であり、そんな大事な対局に、勉強中の戦型の試行運転を試みるなど、とても信じられないのである。
以下、何やら意味不明な「現代将棋」談義が進むが、基本的に、話題の切り出し方が間違っているから、どんどん自分を追い詰めているだけで、読者にとっては、迷惑な議論である。
「昭和将棋」と無縁な平成世代の若手棋士の噂が出てくるが、それとこれと、何の関係があるのだろうか。「時代を意識した戦略」とは、棋界のトップテンの中でも、最上位に位置する棋士を戯画化している感じである。
いや、こうした物言いは、観戦記めいた書き物でも、この観戦記者に限ったことではないのだが、例によって、毎日新聞のA級順位戦観戦記の品格を基準に見れば、随分、低次元の理屈のこね回しだと思うのである。
A級には、A級にふさわしい毅然とした言い回しをのぞみたい。
以上
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