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2014年10月16日 (木)

私の本棚 18 安本美典 邪馬台国近畿説を撃破する 更新再掲

 宝島新書 2001年
私の見立て★★★☆☆     2014/05/24 追記 2025/01/13

 このシリーズも、20回を目前に、停滞し、読書感想文の断片のようになっているが、諸般の事情で、広く見届けられなくなっているので、スポット書評をご容赦いただきたい。

 さて、高名な安本美典氏は、本書でも、いろいろ学術的な論破を試みられているようだが、以下のようにものの道理に訴える方が、確実に「撃破」できるのではなかろうか。

*提案~もうひとつの撃破作戦
 今日の文明をしても、奈良盆地南部の飛鳥の地を首都として、全国を支配することは不可能に近い。九州北部、筑紫地域に、今日言うところの西日本の一部だけに限定してても、国家として有効、勝つ、持続可能な支配は困難ではないか。
 この地域は、閑静な地域であるが、外部世界との物流交通が困難な山間僻地であり、ここに隠遁することに納得している「国家」には、全国支配どころか西日本支配にも不向きである。

 全国支配について触れるのは、この地に「首都」を置いて、西の方向だけを国家支配し、東の方向は、支配していないと考えるのが、不自然だからである。(追記 2025/01/13 三世紀の古代史用語で、「首都」は、国家元首の居城、勅命の発信地を「都」と呼称していたとき、当該時点の「都」を、旧都等と区別する目的で、曹魏文帝曹丕が宣言したのに倣えば、旧都の存在を明示するものと見えます)
 とはいっても、西を支配するのが困難な地域から、東を支配するのも、また困難であることは言うまでもない。だからといって、西日本限定とも行くまい。首都は、国の中心付近にあるものだろう。
 言い方を変えると、西日本の支配には、少なくとも、水陸交通の便の良い、大阪湾岸地域に首都を置かなくてはならないと思う。
 言い逃れとして、古代国家から、経済、軍事の本拠地を分離し、大阪湾岸に西都として置くというのは、危険な考えである。経済力、軍事力の集中する西都は、早晩、自立するのである。

 古代国家の臨海首都は、西方からの進行に対して防衛困難になるが、前方に吉備などの拠点を確保していれば、西方から敵軍が大挙押しかけてきても、食い止めることができ、孤立無援とはならないのである。
 これに対して、九州北部、主として筑紫地域に古代国家を想定すると、そのような国家は、随分小ぶりなものになるから、3世紀の時点で、その程度の面積の領土を支配することは、さほどの困難はない。
 つまり、そのような古代国家は、西日本を統一支配するものでなく、従って、遠隔の近畿を支配しなくてもいいから、随分小ぶりな国家である。

 その首都は、国家のほぼ中央にあって、東西南北、数日の行軍範囲であれば、国家として有効、勝つ、持続可能な支配は容易である。国家内各地から、米穀を徴税するのも、まことに容易であり、貯蔵した食糧を飢饉の際に支給するのも、容易である。

 三世紀中頃に於いても、古代国家内の諸国の内情は知られていて、国内交通及び通信は、さほど困難でなかったことがうかがえる。
 やはり、三世紀に的を絞れば、広く西日本を支配する古代帝国を想定し、しかも、その首都を奈良盆地南部に求めるのは無理であり、河内に求めるのも、かなりの困難を抱えている。

 「近畿説」、「畿内説」を主張する諸兄姉に対する満腔の敬意は、取りあえず脇におくとして、三世紀にそのような「首都」を構想するのは、随分な無理筋と認めて、素直に奈良盆地の閉塞地から大陸に遣使したという誇大な夢想である「大和説」を取り下げ、筑紫国家を仮定すべきではないだろうか。

 「近畿説」の奉仕者は、多くの面で恣意に満ちた資料解釈をして古代国家像を補強しているが、このように、素人が一寸掘り下げるだけで、そのような国家が成立し得ないことが見えてくるのである。

*提言
 安本氏が、本気で検討すれば、上に上げた試論、仮説が、容易に学説として確立できるように思えるので、ここに提言するものである。それとも、実態のない学説の論破は、足のない幽霊を斬るのと同様で、安本氏の名刀と名技を以てしても、不可能なことなのだろうか。

以上 

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