今日の躓き石 『過剰防衛』
2014/10/14
定番の前振りであるが、別に免責を願っているわけではない。批判は甘んじて受ける覚悟がある。事実誤認があれば、速やかに謝罪、削除するものである。
毎度の毎日新聞批判なので気が引けるが、毎度説明しているように長年の購読者であり、また、毎日新聞の全体としての編集の品位に敬意を表する故の指摘と理解いただきたい。
今回の批判の対象は、本日夕刊社会面の記事で、JR西日本が台風の接近に備えて運休したことの評価として、「妥当な判断/過剰防衛」と専門家の評価が二分されたという記事の見出し部のむき出しの過剰防衛と、ある専門家の発言の中の『過剰防衛』の二つである。
見出しの方は、むき出しであるので、やや「防衛」といういかめしい言葉に違和感を感じるが、企業としての乗客保護が過剰で、本来必要であった以上の不便を与えたと言う趣旨のようである。 結果論で、被害は大したことなかったのにという言い分が勝ちそうであるが、それでは、乗客の利便より乗客の生命を優先する、公共交通機関としての義務を果たせないことが明らかと思う。
関係者に余計な不快感を与えるのを避けるために他の事象への言及はしないが、知恵あるものなら、つれづれなるままに思い起こすことが多々あるはずである。
私鉄とJRは、それぞれ実質のある審議を経た上で社内ルールを制定し、所管官公庁の承認を経て、自身の運行ルールとしているのである。事情に通じた専門家達が知恵を寄せ合った衆知の結晶がルールであるから、目下の一事象だけ捉えて、部外者が一方のルール運用を非難するのは筋違いである。
このあたりは、とても、一介の短報で語り尽くせるものではないと思うのだが、いかがだろうか。
そして、記事の最後に登場した専門家の意見に、「私鉄は利用者を考えて」とあり、利用者の何を考えていたと指摘しているのか欠落しているが、それはそれとして、JRが利用者にとって何より大事な「生命と安全」を優先して考えたのは明らかであるので、同様に端折って言えば、「JRは利用者を考えて」いたのである。この部分は、JR批判の言い分としては、不適切である。
その後に、唐突に「過剰防衛」とあるが、この形で書かれていると、法的な用語を流用したものと受け取らざるを得ない。なぜ、そんな物々しい、自分も消化し切れていない借り物の言葉を援用するのか、不審である。「特任教授」は、司法関係者なのだろうか。いや、それにしては、不正確な利用である。
今回の運休措置で、JRは、言わば台風から攻撃されると思って身を固めたのであるが、そこまでで擬人化した比喩は終わり、自分と乗客を攻撃から守るために「台風」に対して反撃して台風に障害を与えて過剰防衛と指摘され、告発されるべきものではないことは明らかである。無造作な物言いで、世間に、誤解を広めて良いものだろうか。
いかめしい用語を流用せずに、過剰な対応と言わなかったのが、権威ある人として全国紙記者の取材を受けたものにしては、不用意で不出来な発言である。
当然、報道機関からコメントを求められることは、不意打ちなどではなく、あらかじめ想定していると思われる身分の方たちであるから、前後、左右、上下、過去未来を見渡して、賢明なコメントを用意されていると思いたいのである。
結局、全国紙夕刊社会面記事のまとめ方が不用意なのである。
突然のネタ振りで、戸惑うかも知れないが、取材先が不適当な言い方をしたまま、紙面に載せてしまうのは、報道の使命に隠れた新聞社の配慮不足というのが、しばらく前から、一貫して苦言を呈しているものである。通りすがりの部外者、野次馬、素人のコメントをとやかく言っているのではない。
それにしても、高名な毎日新聞校閲部は、字面だけを追いかけて事足れりとしているのだろうか。
以上
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