今日の躓き石 「過去のデータを分析」? 将棋名人戦
2015/04/01
当ブログの筆者は、幼稚園時代以来の将棋ファンであり、有段者であることを前置きしておく。自慢話と言うより、それなりの見識が備わっていると言いたいのである。
毎日新聞社が、名人戦の主催紙(朝日新聞と共同主催)として、名人戦の盛り上げを図っているのは当然だが、下馬評での囃子立てが見当外れでは、「盛り下げ」になるのである。
今回の記事は、毎日新聞大阪版4/1付け夕刊の文化面記事である。
見出しから不吉な感じがする。
「カギを握る初戦」 当たり前の話だが、「カギ」になんの説明もないので、唐突だし、「初戦」には人格も何もないので、「カギを握る」とは、まるで言葉が足りないのである。
まあ、比喩としても、初戦の勝利が番勝負の帰結に大きな影響を持っていると、感じ取れるように書くべきではないかと思う。
「過去のデータを分析」とぶち上げているが、データは、時制で言うと過去のものに決まっているので、「過去の」は冗語である。
さて、記事の冒頭部では、「毎日新聞が」と大新聞を主語に持ってきている。記者は、「代表権」を持った役員なのだろうか。ぎょうさんなものである。
つづいて、「過去20年(「間」が脱落か)の勝敗データを調べたところ」と大げさに言い立てているが、20年分の勝敗結果は「勝敗データ」ともったいを付けるほどのものではない。せいぜい100局程度の勝敗結果なのである。分析も何も、筆算でできる程度の四則計算で結果は出る。大げさなものである。「データ」も「分析」も、もっと高度な知的事項である。
そして、出された結論は、常識的なものである。今更言われなくても、たいていの場合は、初戦に勝ったら、あとは、その勢いでタイトルを勝ちとるものなのだろう。
それで終わりかと思ったら、突如、次の段落からは、第1期以来の名人戦の勝敗の「分析」に入るというのである。
名人戦は、戦前に創設され、戦後両主催紙の努力で、大いに興隆したものであるが、昭和は遠くなりにけり、あるいは、前世紀の遺物と言うべきか。勝ち負けの意義が違うのである。
近来の一勝一敗の勝負に辛い対局は、意図が異なっているのだから、余り参考にならないものと思う。
「データ」の量が多ければ、「分析」の信頼度が高まるというものではない。
記者もそれに気づいたか、現名人の名人戦の勝敗結果について述べているが、現名人が名人タイトルを奪われたのは、3回までが「長年のライバル」である。要は、タイトル戦の結果は、相手次第と言うことではないのだろうか。
所詮、将棋は人と人が対局して勝敗を争うものである。勝敗は対局の上っ面である。上っ面に対局者の栄枯が現れるのだが、上っ面を安易になめただけで、掘り下げがなくては、「分析」というには、ほど遠い。分析というのなら、技術的な分析、戦型選択、攻勢守勢の取り方、果ては、中終盤の決着の仕方(見落とし)などについての掘り下げがあるべきであろう。
重ねて言うが、分析と言うからには、何らかの普遍的法則が浮かび上がるようなものでなければなるまい。
以下、余談であるが、現名人の通算7期名人位保持で、防衛は4期に過ぎず、かたや、防衛失敗が4回あると言うことである。それも、同一相手に対して、3回防衛に失敗しているのである。
現名人は、トーナメント制のNHK杯戦で4連覇した(その間無敗)実績がある上に、10期以上連続防衛しているタイトルもある抜群の実力者なのに、名人と竜王の二大タイトルに限って言うと、3期以上の連続保持ができていないのである。
この辺りに、現名人の持ち味があるように思われる。(誰だって、何かしら欠点はある)
以上
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