今日の躓き石 「フィジカルに強い」とは
2015/05/24
今朝も、毎日新聞大阪13版スポーツ面で、つと引っかかったのである。
なでしこのプレーヤー評価で、「フィジカル、ヘディング、競り合いに強い」とある。
簡単に意味が通らないので、立ち止まって読み解こうとするのである。
普通、こうして羅列されているのは、フィジカルに強い、ヘディングに強い、競り合いに強い、と分解して読み解くものなのだが、今回はどうも意味が通じない。
最近、スポーツ系の「フィジカル」の用例では、体がでかい、体重が重い、力が強い、足が速い、持久力がある、と言った体格、体力の形容のように取れる場合が多いのだが、今回は、「フィジカルに強い」と書いているので、そうした意味とは違うようである。
「ヘディングに強い」というのは、素人なりに読みほぐすと、ジャンプ力がある、ゴール前に放り込んでくるプレーヤーとの連携が優れている、などの特徴以外に、場所取りに強いというのが含まれているように思う。ディフェンダーが体を預けてきても、ふりほどく強さが必要なはずである。
いや、そういったことは、フォワード系の攻めのプレーの話であり、ここでは、ディフェンダーの特徴なので、少しニュアンスが異なってくる。ジャンプ力は共通しているが、他は、異なってくる。
「ゴール前に放り込んでくるプレーヤー」は、ここでは敵なので、ヘディングで相手に勝つためには、相手の攻め筋を先読みする知性が求められてくる。敵のプレーヤーに体を預けて、ヘディングに向けてジャンプさせない技も必要になってくる。
最後の「競り合いに強い」、というのは、何の競り合い、どんなときの競り合いか、ここだけではわからないのだが、ヘディングの競り合いは除くのだろうか。競り合って、何をするのだろうか。
元に戻って、最初に挙げられている「フィジカル」であるが、素人目には、フィジカル・コンタクトのことに思えるのである。ディフェンダーと先を争うような場合でなければ、強い、弱い、とは言わないように思える。
ここで、余談が入る。
元々、サッカーは紳士(ジェントルマン)の競技であり、ショルダーチャージという「生やさしい」ボディーコンタクトしか認められていなかったフェアプレーのスポーツだったが、紳士階級以外の体を使う階級のプレーヤーのチームと闘うようになると、それでは、守り切れなくなったのであった。
敏捷で走力に優れたプレーヤーが、ポルを持ってゴール前に侵入してきたときに、フェアプレーでは、ディフェンダーがかわされて、失点するのであった。
と言うことで、ボールに行っている限りは、スライディングで足下を削りにかかっても、ファールでないとしてきたように思う。また、複数のディフェンダーがよってたかって囲い込むような紳士的でない守りも出てきたのである。
そして、現代になると、時には、ユニフォームを引っ張ったり、体を蹴ったりしているのが、今日の試合の姿である。言うならば、ボール競技と言うより、フィジカル・サッカーである。
と言うことで、余談をたくさん交えて今回の3者羅列について、素人なりの解釈を試みたが、少し崩れた言い回しと見ざるを得ない。書く方は、勢いに任せて通り過ぎたのだろうが、読む方は、わからないことは、読み返して、意味を取ろうとするのである。
今回も、少し遡って、別のプレーヤーの形容を見ると、「ボールの奪取能力と長短のバスを繰り出すダイナミックなプレーが持ち味」としている。
ボールの奪取能力という言葉が使われていて、特定の「競り合い」に強いと言うことに見える。これは、大変、具体的な特徴である。
これに対して、「長短のパス」云々は、深読みしないと理解できない、意味深長な書き方である。
ディフェンダーのバスとなると、ボールを奪い取った後のプレーなのだろうが、攻め(カウンターアタック)に移ったときに、前線の展開に応じて、長いパスで一気に攻めていくのか、短いパスの組み合わせで攻め上がりを待つのか、その時に応じた戦略を選んで行く重要な役目を果たしているように思える。
これは、「ダイナミック」と形容してしまうか、戦略的と呼ぶか、随分印象が異なるのである。プレーヤーとしての資質が、最初に俎上に上ったプレーヤーと随分異なるように思うのである。
このように、記者の書き方をつらつら眺めると、二人に対して使う言葉も言い回しも違うので、どこがどう違うのか一向にわからないのである。二人の資質を、直接比較しては、取材対象となる二人に失礼に当たると言うことなのだろうか。それとも、読者に対して以上のような深読みを強いているのだろうか。当方のように、全くの素人には、荷が重いのである。
また余談になっているのを反省して、最初に挙げた課題に戻ると、ここに書かれた羅列表現は、分析して読み解くことの困難な表現とみるのである。
中でも、三者の冒頭に挙げられた「フィジカル」という言葉は、最重要の位置付けにありながら、スポーツ界に多いできの悪い造語ではないが、意味解釈の一定しない、読者にとっては意味不明瞭なカタカナ語であり、報道の用を為していない不出来な言葉遣いだと思うのである。
これは、毎日新聞に署名入りの記事を書くほどの記者にしては、不用意な書き損じてある。
以上
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