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2015年5月12日 (火)

今日の躓き石 「リベンジ」 週将談義

                                          2015/05/12
 今日の意見の対象は、日本将棋連盟の発行する週刊将棋であるが、今回初めて気になったというわけではない。
 2015年5月13日号で特に目に付いたと言うだけである。

 将棋報道関係者は、概して、言葉遣いに慎重だが、中には、軽率な人もいるわけである。

 週刊将棋には、随分以前だが、敬意を払って報道すべき人の発言を「リップサービス」と(それとは知らずに)罵倒し、勘違いを諭されても、それを受け入れるのを公然と拒否する乱暴者がいた事例がある。(乱暴者は、普通、指導されて改悛するのだが、この媒体では、個人の暴言がそのまま紙面に出てしまう傾向がある)

 まあ、遠い過去はさておき、目下、これはまずいと思うのは、「リベンジ」汚染の蔓延である。この言葉は、おそらく、スポーツ関係者のアメリカ英語、それも、おそらく、スラングの類いが、一部野球選手の持ち込み汚染だと思うのだが、マスメディアで報道されて拡散したようである。

 つまり、マスメディアが、悪しき言葉遣いによる日本語の汚染を拡散している例である。

 将棋は、対戦競技であるから、勝つことと同じくらい負けることがある。そのたびに、くやしい思いをして、次は、勝って見返してやるくらいは誰でも思うのである。しかし、それが、「リベンジ」という血なまぐさい言葉で飾られることは、とんでもないことだと思うのである。

 「リベンジ」は、復讐である。

 それも、自分の周囲の者が殺されたから、相手を殺して仕返しするという血なまぐさいものである。だから、旧約聖書の太古の時代以来、いずれの社会でも、個人的な復讐を禁じ、司法(神の裁き)に委ねるように指導されている。武士の論理が支配していた江戸時代でも、仇討ちは所定の条件を兼ね備えていると認定した赦免状がなければ無法な私闘であった。

 我々はも現代人であり、日本人であり英語を自国語としていない。また、大抵は、キリスト教徒ではなく、神の裁きに復讐の思いを委ねる者とは言えない。

 だったら、本来の意味に遠い、日常的な勝負の貸し借りについて、軽率に、「リベンジ」と言うべきではない。そして、マスメディアは、言葉の守り人となって、将棋関係者の言葉の悪用を拡大させず、沈静化させるべきである。

 でないと、子供達やその子供達が、マスメディアの不注意が原因で忌まわしい言葉を使うようになっていくのである。

 かつて、スターウォーズシリーズのエピソード6は、”Revenge of the Jedi” と予定されながら、ジェダイ騎士団が再起して銀河世界を正すのは「復讐」ではない、として、”Return of the Jedi”に訂正されたという故事に学ぶべきである。

 因みに、日本側関係者は、英語に弱く、概してキリスト教徒では無かったと言うことだろう。原作者が、大きな経済的なロスを顧みずに訂正した語義に鈍感だったようで、日本語タイトルは訂正されなかった

 言うまでもないが、ここで長々と苦言を呈するのは、過去の一部の事例にかかわらず、日本将棋連盟の週刊将棋編集部が、聞く耳と良識を持っていると思うからである。

 日本将棋連盟は、「将棋倒し」という言葉が事故報道などに適用されることに不快感を感じていると苦言を呈したのであるが、言葉の悪用の害とはそのようなものである。メディアが自覚して正さなければ、永遠に是正されないのである。

以上

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