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2015年6月17日 (水)

今日の躓き石 校閲部を校閲する?

                                     2015/06/17
 毎度ながら、毎日新聞大阪版の話であるが、まずは、毎度ながら、スポーツ欄でのサッカーナショナルチーム監督の談話で、「サッカー人生」という失言が書き出されている。軽率な言葉選びに、まずは引っかかるが、本人が日本語でしゃべっているわけではないので、言葉の選び方がお粗末なのは、翻訳者の責任である。と言っておく。

 それよりは、定例のくらしナビ面月一掲載の校閲部のコラム「字件ですよ」で、地の書き方で選手の「野球人生」と書き出しているのが、大変気がかりである。ここは、スポーツ欄記者の書きなぐり記事でなく、「言葉の守り人」の姿勢を世に知らせる場所である。言うならば、日本全国でお手本にしている所で、これはないよ、と思うのである。
 「**人生」と言う言い方は、スポーツ欄記者固有の悪弊かと思っていたら、すでに、「言葉の守り人」の感性まで汚染されているとしたら、嘆かわしいものである。

 言葉には、日常、どんどん使って、時には、踏んだり蹴ったりして、慣れ親しむ言葉もあれば、それこそ、人生の機微を語りたい時だけに使う、とっておきの言葉がある。はっきり言って、「人生」というとっておきの言葉を、普段着に下ろして、汗や食べこぼしにまみれさせたくないのである。

 元々、誰かが英語でBaseball Lifeと言ったとしても、それを日本語で「野球人生」と言い換えて良いかどうか、考えて欲しいのである。

 ちょっと場合は違うが、ノートパソコンの充電池の持続時間を、業界のかなりの企業が「バッテリー寿命」と翻訳していて、情けない思いをしたことがある。元々、米国企業が言葉遣いに無神経で、Battery Lifeと無造作に書いていたせいであるが、それに追随する方も、よくぞ追随したものである。

 言うまでもないが、充電池の容量を使い切って空にしても、充電すればもまた満タンになって復活する。
 いや、もっと大事な話がある。人間は悲しいかな限りある寿命を生きているが、ものは元々生命(Life)がないので寿命(Life)もないのである。

 これが、英語として当然の使い方であれば、アメリカ英語の伝統を守るべき知識人の権威も地に落ちたものであるが、アメリカ人皆がこうした業界用語の良い崩しに同意しているわけではない
 アメリカのように多様性を包含する社会でも、言葉選びに無頓着な種族が、間違った言葉遣いを拡散させていることに、多くの人たちが義憤を感じているのである。アメリカにも、言葉の規範はあるのだ。

 と言うような、まねしてはならない事例を横に置くと、ここに言う「人生」は、何とも情けない言い方である。単に、自分の選手生活、監督生活といった、個人のキャリアを言うものに過ぎない。選手時代、監督時代も、普通の個人としての生き方があったはずである。

 「人生」は、その人にとって一度きりのかけがえものであり、産まれたとき、と言うより、物心ついたときから最期まで続くものであり、「**人生」と手軽に小分けにして、「穿き崩す」ものではない。 

 大事な言葉を「普段着」にしたら、大事な話をしたいとき、どうやって話すのだろうか。

 因みに、少し踏み込んで「野球人生」という言葉を新入り言葉と認めたとしたら、野球人生初、と言うのが、賢い言い方かどうかである。
 それこそ、小学校の試合でホームランを打ったことを野球人生初といい、プロとしての初ホームランを、野球人生二度目というのは、どんなものか。あるいは、高校時代に、甲子園でホームランを打ったことを野球人生初というものか。

 プロ野球の公式戦は、技術的にも、選手としての受け止め方から見ても、それ以前の全ての野球経験と段違いのものと考えるのである。それにしても、選手本人は、こうした言い方をどう思うのかである。

 言うなら、昔から言い慣わしている「プロ初」で良いのであり、言葉の言い崩しを付け足す必要はないと思うのである。

 「野球人生」という言葉は、用例案などを慎重審査の上、断固「却下」である。

 ハリルホッジ監督の「サッカー人生」との言い方も、自身の一流クラブやナショナルチームでのプロ選手として闘って以来の経験だけを言っているのであって、まさか、子供時代の路地裏サッカーから思い起こしているのではないだろう。

 読者に事実を伝えるという報道の本分に照らしても、問題の多い、軽率な言い方と思うのである。

 毎日新聞校閲部ほどの見識があれば、素人の感じる情けなさを共感して頂けると思うのである。

以上

 追記  「字件ですよ」には、読者の「ご意見、ご感想」の連絡先が書かれているが、それでは、「ご意見、ご感想」と持ち上げているものの、連絡してしまうと当方が意見を押しつけ回答を強要しているようになるので、他の記事同様、言いっ放しの道を選んでいるのである。あるいは、「クレーマー」との定評を受けるのが怖いのかも知れない。
 別の言い方をすれば、ここまでの記事全部に、都度きっちりと回答が返ってきたら、当方も、更に回答せざるを得ない。論争と言わないまでも、意見交換会になったとしたら、当方は、心身ともに忙殺されるると言うことで、万事、言いっ放しでないと、身が保たない。

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