今日の躓き石 サッカー独特の用語としての「フィジカル」
2015/06/23
今日の題材は、毎日新聞朝刊大阪13版スポーツ面のバンクーバーレポートである。
主力ベテラン選手のオランダチーム評として、「身体能力が高く、フィジカルが強い」との発言が引用されている。つまり、随分長く悩まされている「フィジカル」の表現の揺らぎは、記者のペンの揺らぎであって、監督や選手の心は一貫しているようである。
身体能力とフィジカルは別のものであり、フィジカルは「強い」と言われるのであれば、フィジカルは、おそらく当たり(の強さ)と言うことだろう。
競ってボールを追いかけているときに、肩や腰の強い当たりで相手を横にはじき飛ばすのは、サッカーで言うチャージングであり、ルールで認められているものである。もちろん、相手の体の前に割り込んで、相手を排除するのも、ルールの範囲である。これは、スポーツと言っても、陸上競技、体操、野球、卓球などでは無いものである。
してみると、意味のとり違えの出やすい(常態化している)「フィジカル」でなく、「コンタクト」(プレー)と言えば、カタカナ語として程度の良いものになるように思う。
何しろ、サッカーに、「メンタル」チャージとか、「メンタル」コンタクトはないのだから、殊更、フィジカルと言う必要はないのである。
それ以外の「フィジカル」なプレーとなると、腕を広げて相手を押しやったり、相手の上体を抱え込んだり、ファウルめいた動きになるが、こうした動きは、下手をすると、肘打ちとかびんたになるので、けんか紛いの「暴力行為」もどきになる。
よく、スポーツでフィジカル、メンタルと、言葉端折りして言い立てるのは、本当は、後に、ストレングス(強さ)、コンディション(状態)、プロブレム(問題)、イルネス(病気)のように具体的な言葉が続いていて、二語熟語のアタマだけで、二大要因として対比して言い立てるためではないだろうか。大事なのは、端折られている うしろの言葉である。
ついでに言うと、当人の発言をそのまま書き取ったのだろうが、「ロングボールを蹴れて、縦に強い印象」というのは、いかにも、臨場感のある業界言葉だが、実際は、「素早く、長いパスを、縦に出してくるという印象」とシンプルに言えば、字数が少なくて、一般人にもわかりやすいと思う。
それにしても、記者は、プレーヤーの言っている言葉の意味を解しているのであれば、読者の言葉で書いて欲しいのである。
因みに、別のプレーヤーの「同じアジアの....オーストラリア」というのは、言葉足らずで誤解を招くのである。地理学的には、オーストラリアは、アジアの一部ではない。あくまで、FIFA地域わけで、アジア代表となっているだけである。以前、毎日新聞の社会面記事で、サッカーのイングランドプレミアリーグを「英国」プレミアリーグと書いているのを見て、ずっこけたのを思い出す。スポーツの地域わけと地理区分は、いつも一致しているとは限らない。(子供が勘違いするのである)
ついでに言うと、記者コメントの「ライバル心」と言う発言も、珍しい用語である。普通、ライバル意識、カタカナ語を避け「対抗意識」と言えば、わかりやすいのではないか。まあ、ここまで口に出している以上、「のぞかせる」ではなく、「自分自身に対してかき立てている」とでも言うのだろう。記者も気がせいているのだろう。
それはさておき、総じて、今回の意見は、ディフェンスからの発言が目立っていて、記者は「失点しないことが大事」と締めているが、感心しない。
なでしこジャパンの(周知の)弱点は、点を取れていないと言うことであり、そこから来る危機感がディフェンス陣の気持ちを、必要以上に硬くしているのではないだろうか。
それにしても、フォワードが、この記事をどんな気持ちで読むか、チームの攻守のバランスが崩れないか、気がかりである。
チームとして大事なのは、早い時間帯に先制点を挙げて、ディフェンスを楽な気持ちにすることのように思う。
ここまでの決勝トーナメントの推移でも、ゴールキーパーやディフェンダーが、相手プレーヤーのペナルティエリア突入にパニックになって、無理なチャージで相手を倒し、PKを与えているのを見かけた。
一点与えたら負けるという切迫感は、決して、チームにプラスにならないように思う。
今回は、躓いたわけではなく、立ち止まったのである。
以上
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