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2015年6月14日 (日)

今日の躓き石 メンタルを保つ

                                     2015/06/14
 今朝も、昨日に続き阪13版スポーツ面で、つと引っかかったのである。

 言い訳は毎回なので省略する。こうした苦言を聞くのは不愉快だろうから、早く、言わずに済むようになって欲しいものである。言う方だって、別に愉快ではないのである。

 63戦で100安打を打った若き好打者の談話に、「メンタルを保っている」とあるが、何のことかわからないので、折角の自慢話の真意が伝わらないのである。そこまでは、技術論が具体的なので、素人なりにわかった気がするが、この部分は、理解できない。

 一般に言われる言葉を取り出して言うと、「メンタル」ヘルスを保っているのだろうか。それとも、勝手な造語で、「メンタル」パワーを保っている、と言っているつもりなのだろうか。躓くと言っても、その場に倒れ込むほどの邪魔物ではないが、完全に足が止まるのである。

 別の戦評では、投手の突然の大乱調について、当人の談話も引用して「パニックに」陥って、「感覚が狂って」とあるから、素人ながら、どんな心理状態にあったかわかる。
 何しろ、人が「パニック」状態になると、血圧や脈拍が動揺し、視覚が揺らぎ始め、そして、筋肉の制御が効かなくなるから、ドクターストップで降板するしかないと納得するのである。
 つまり、投手の心の状態が、ほぼ的確に読者に伝わってくるのである。

 読者は、投手の「心技体」の、「」(技術)や「」(体調、故障)の問題ではなく、また、油断や過緊張のように、気を落ち着ければ回復する程度ではなく、深刻な「メンタル」プロブレムであったか、と一応納得するのである。

 これに対して、「メンタル」と言うだけで、意味の通らない記事は、報道の役に立っていないと言える。
 これまでも、機会のあるごとに指摘しているように、「メンタル」は、もともとできの悪いカタカナ言葉であり、困ったことに、あちこちで色々崩して使われているから、この4文字だけでは、何を言っているのかわからないし、この急造カタカナ言葉を、英語のmentalと見立てて英和辞書を引いても、解答はないのである。

 記者は、その選手独自の「メンタル」の一言で意味がわかるなら、どうか、言い換えの言葉を足して伝えて欲しいのである。もし、自分にもよくわからないのなら、読者に丸ごと投げつけるのではなく、選手に問い返して欲しいのである。それで、選手も、自分の言葉がファンに通じないと言うことを知るのである。

 「気負わずに日々同じことを続けていられる」と、大人めいた表現で記事を締めているが、それだから高みに立てるとは信じられないし、「平常心」と「メンタル」は、どう繋がるのだろうか。むしろ、「それでメンタルを保っている」と言う意味不明の下りを省略した方が、選手の真意が伝わるように思える、と感じたことを付け加えておく。

 報道に当たる記者は、もっと、報道の基本に忠実に、そして、読者の乏しい知識と理解力を忘れずに、丁寧に語って欲しいのである。

以上

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