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2015年7月 3日 (金)

今日の躓き石 「幸運」な自滅点

                                   2015/07/02
 今回の題材は、毎日新聞大阪夕刊第3版のスポーツ欄。引き続き関心を持って読んでいるエドモントンレポートである。

 大見出しに「幸運」とあり、縦見出しに「自滅点」とある。何とも、全国紙としての品位に欠ける惹き句である。これでは、日本チームが攻めたら、たまたま相手がミスして、棚ぼた得点で勝ってしまったという見方が浮かんでくる。

 記事本体は、客観的な報道に努めているように見えるが、いくつかのボロが目に付く。今日の躓き石である。

 「ボールは蹴るべき方向とは反対側の自陣ゴールに吸い込まれ」たと揶揄しているところを見ると、記者は、イングランドのプレーヤーに、後方に蹴り戻す選択肢があったにもかかわらず、自陣ゴールに蹴り込む無謀な対応をしたと見ているようである。

 ものの見方には、個人の主観が入るから、絶対と言うつもりはないが、あの瞬間の選択としては、走り込んだ勢いとボールの進行を見る限り、右にそらせるか、上に跳ね上げるかとして、クリアするしかなかったと思う。
 ただし、滑り込んでつま先で押し出すけり方しかできないから、右に大きくそらせることは、まずできないだろう。つまり、駆けつけて右に蹴り出すには、左のインサイドで叩き出すしかないから、追いつけないかも知れないし、追いつけても足が合わないかも知れないし、斜め後ろから飛び込んでくるボールに対して空振りするリスクもあるから、余りにも成功の可能性が低くて論外なのだろう。
 結局、ボールの勢いを生かして、上にそらしてクリアするしかないのだろう。

 そうした理屈はとうに承知であり、スライディングで跳ね上げるクリアは、普段の練習で何百回となく確認している手順だろう。失敗も成功もたっぷり経験しているはずである。失敗には、数多くのオウンゴールもあったはずである。

 もちろん、そのようなプレーを避けてスルーして、キーパーに任せることも考えられないではないだろうが、一流のプレーヤーが、責任回避することはないだろう。
 まして、ボールの進路には、日本のプレーヤーが二人走り込んでいるのが見えていて、キーパーと2対1になるので、スルーすれば失点は必然と見たはずである。いや、見ていなくても、クロスの入り方を見て、そう感じていたはずである。

 だから、あの瞬間のプレーは、双方最善を尽くしていたのであり、日本が得点できたのは、後方からの絶妙のクロスが入ったことも含めて、絶好の攻めの体制を確立していたことにあるのである。決して、幸運の産物ではない。イングランドの敗因は、日本にそうした決定的な攻めのお膳立てを許したことにある。

 そのような決定的な攻めに対して、何も抵抗しないで失点するのでなく、果敢にチャレンジしたのは、「自滅」などではないのである。それとも、記者は、日本チームには、あの形で決定する力はないと見ているのだろうか。

 と言うことで、今回の見出し仕立ては、日本チームの見事な攻めとこれに対して拮抗していたイングランドチームの果敢な守りを報道しないという意味で、疑問を感じるのである。 

 これでは、イングランドのディフェンダーが、かわいそうである。

 これでは、日本チームの強さが見えてこないのである。

 こうしてみると、記者は、両チームの実力と努力を軽視しているように見えるのである。

 以上のような意見は、遙か日本でテレビ観戦している、一介の素人が抱いたものなのであり、勝ち寄った見方であることはいうまでもない。

 現地の記者は、専門家から深い意見を取材できたと思うのだが、専門家まで、「幸運」「自滅」に染まっていたのだろうか。

 今回は、不穏当な用語に関するものではないが、スポーツのプレーヤーに関する報道姿勢に対して、疑問を呈するものである。

以上

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