今日の躓き石 「白頭奇譚」 スポーツ報道の使命
2015/08/20
今回は、毎度おなじみの毎日新聞大阪13版スポーツ面の報道への苦言である。
「頭が白くなった」と言う「けったいな」表現が、堂々とまかり通るようになってきた。
引用符で囲まれていると言うことは、担当記者は、選手自身の言葉を正確に報道していると言うつもりなのだろうが、それは違うのではないか。
この言葉遣いの現れたのは、しばらく前だったように思うが、丁寧に「頭の中が真っ白になった(ような気がして、何も考えられなくなった)」といった感じの発言だったように思う。
それが、どんどん端折られてきて、「頭の中が真っ白になった」と笑い飛ばす記事が現れ、これは何だと不審を感じたものである。
今や、事態は悪化(劣化)して、「頭が白くなった」と笑い飛ばしている。
これは、歴史的な言葉遣いでは、髪の毛が白くなる、と言う意味であり、誰の目にも見えるのであるが、今や、そうした歴史的な言葉遣いが、踏みにじられているのである。
子供が悪い言葉遣いをまねする、と言う危険だけでなく、メディアがどんどん言葉遣いを悪くしていて、悪い言葉遣いを堂々と誇らしく報道・拡散している。毎日新聞に出ていたからという後押しを得て、子供がまねするのである。
選手達は、突然連打を浴びてノックアウトされるという事例に出会ったとき、「頭が白くなった」と言えば、事態が類型化されるので、それ以上質問されることがなくなり、前例に倣った言い方をしたことで、多少とは言え気分が休まるようになっているのだろう。
今回の記事で言えば、「頭の中が真っ白になった」と書かなくても、選手が事態に直面して受けた動揺は報道できている。貴重な紙面を消費して、意味のない、意義に疑問のある常套句を普及させる必要はないのではないか。
繰り返して言うが、野球界に広く普及しているらしい「頭が白くなった」と言う表現は、自然に生まれたものではなく、スポーツメディアが生み出し、作りかえ、まき散らしている悪い言葉の一例であって、メディア自身が全体として気づいて正さない限り、歴史遺産に刻み込んだ落書きのように刻み込まれているのである。
毎度の苦言であるが、毎日新聞は、スポーツ面とは言え、選手達とそれを取り巻く軽率なメディアに流されて、たちの悪い言葉遣いの普及を進めるのではなく、毎日新聞の見識をしっかり身につけて、歴史的な言葉遣いを護り、次世代に伝えるという立場を堅持して欲しいのである。
以上
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