私の本棚 30c 季刊邪馬台国126号雑感 付説-1
季刊 邪馬台国126号 2015年7月
投稿原稿 「魏使倭人伝」から見た邪馬台国概説
2015//10/10
付説-1 魚豢 「魏略」考
*編纂者と時代背景
魚豢に関しては、晋書など史書への記載が乏しいが、書かれている限りは、れっきとした魏朝高官であり、かつ、史官の業務にも関係していたと見られる。つまり、「魏略」は、紛れもなく同時代史書であり、先に述べたような良質の(生の資料に近い)原史料に依拠して、自身が仕え、かつ、運営の一角を担っていると自負している魏朝の史書として「魏略」を編纂したものと推定される。
魏略と題して、魏書としなかったのは、魏王朝の存続を想定し、後年魏朝が後継王朝に譲った後の正史編纂の際の典拠史料(魏書稿)としたのであろう。
ただし、実際は、魚豢の経歴、業績の詳細は不明である。
ここで重大なのは、魏略は、遙か以前から、原本どころか写本すら現存していない散佚資料であると言うことである。
*記事評価
魏略の記述として伝えられているのは、あくまでも、他の著作に引用された逸文であり、そのような逸文引用が、その時点で存在していた、信頼できる魏略写本に依拠していて、魏略原本の記述に合致しているという保証はない。
誤字、誤記が必ずあると断定しているのではない。
*総評
三国志と並んで論じるなら、魚豢の魏朝に関する記事は、魏朝を正統政権としているので、三国並立の視点を採った陳寿と異なる魏朝内部視点から記述された同時代史料として、大変意義の高いものと見られる。
逸文が多く残存しているのも、そうした視点に関して、それら逸文引用者の評価が、格段に高いことによるものであろう。
この項終わり
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