「モツレク騒動」 Naxos of America claims on Bruggens Moz Req
2015/12/16
Naxos of Americaの不可解な申し立てが、しつこく続いている。
Bruggens Mozart Requiem 1998 ブリュッヘン モーツァルト レクイエム
念のために前置きしておくが、当方は、法令遵守を信条とする、単なる一般市民であり、持ち前の知識に基づき、本件に対して考察したものである。一介の市民が、最善の努力に基づいて不審点を提起しているものであるから、法的に誤解を含んでいるかも知れないが、「物の道理」として、大きく外れていないと信ずるものである。
当方は、YouTubeからの「申し立て」に関して、ここまでに、著作権についての基本原理を説いている。
クラシック音楽の「名曲」は、大抵の場合200年以上前の著作物であり著作権は消滅していて、通常言われているような曲に対する著作権を主張するのはナンセンスである。
著作権として有効なのは、演奏に対する著作権、日本の著作権法で言う「著作隣接権」である。
従って、特定の著作物に対して著作隣接権の侵害を主張するためには、「全く同一演奏であるという証拠」が必要である。これに対して、YouTubeの使用している検出手段は、少なくとも部分的に、自身が特徴と考える点が一致していることを指摘しているのであり、「同一ではないと言えない」、と言う指摘をしているだけであり、証拠として不適当である。
現実に、YouTubeの「申し立て」では、誤検知による「誤爆」が頻発している。都度、不合理な申し立てであることを指摘しているが、管理者側は、自身の権利主張に際して、適切な確認努力を怠っていて、申し立ての取り下げに延々と時間を要している。誤解、早計に対する謝罪はされていない。
毎回同様の主張をするのは、憤懣を募らせるだけで、大変不満であったが、今回は、それとは症状が異なるので、気分を新たにして以下の趣旨で反論した。(誤記訂正あり)
「当動画は、NHKにおいて放映された動画映像の部分引用であり、権利者であるNHKから、申し立てを受けていない。
NAXOS Americaは、当動画の音声部分に対して権利を主張しているものと思われるが、そのような申し立てを行う権利を正当に取得しているかどうか、示されていない。NHKが制作したFM放送を音源として、GlossaにCD販売が許諾されている模様だが、Naxos America不適当なの申し立ての根拠となる根拠となるライセンス契約は示されていない。根拠を明示しない申し立てに対して適切な反論を行うことは不可能である。
また、同一の動画映像を低解像度で表現した、実質的に全く同一の動画を公開しているが、これに対する申し立ては、すでに取り下げられている。矛盾した申し立てを、自ら取り下げることなく放置しているのは、自称権利者として、その義務を怠るものである。同一動画でありながら、HD解像度の動画だけが、NAXOS Americaが保有していると自称する権利を侵害しているとの申し立ては、不合理である。
映像著作物の音声部分にだけ排他的権利を有するとの申し立ても、妥当な根拠を持たない、不法なものと理解する。」
当論議に直接関係しないが、当動画に関する事情を、知る限り追記する。
当動画は、フランス・ブリュッヘンが、1998年に18世紀オーケストラと共に来日した際の演奏を収録したものである。フランス・ブリュッヘンの発言として伝えられるところでは、モーツァルト レクイエムの演奏については、模索の段階であり、自身の表現として最終的な物ではないので、他の曲のように当面の決定版ではなく、CD等で発売することは許可しない、との意思であったという。また、来日の各地での演奏は、都度、演奏の構成、展開が異なっていたという。
ここに動画として公開しているのは、NHKが収録しテレビ放送することを許諾された番組を、一視聴者として録画し、その一部を、出典を明記した上で部分的に公開したものであるが、知る限り、再放送等されていないものである。
そのような言明に反して、GlossaからCDが発売されているが、これは、フランス・ブリュッヘンと親交があり、当該来日公演を推進した方が亡くなったので、追悼の意味で、例外として許可したと聞いている。
Naxos Americaが、誰からどのような許可を受けて、そのように特別の意義のある音源を、一般消費者に対して告知することなく(と推定する)ダウンロード販売しているのか、不可解である。フランス・ブリュッヘンの生前の意思に反するのではないかと危惧する。
Glossaは、NHKと契約した(?)際に、ライセンス転売や二次ライセンスの可否について取り決めをしていると思われるのだが、当事者以外には不可解である。
その際、番組制作したNHKからどのようにして音源が提供されたものか不明であるが、CD音声の周波数分布を確認した限りでは、FM放送の特有の「バースト」が収録されている。収録音声の複製ではなく、FM放送用の加工したテープの複製、ないしは、FM放送の受信収録(エアチェック)のいずれかと思われる。この点、若干不可解である。
また、Glossa制作のCDは、ノイズリダクションが過度に施された音声と似た、独特の周波数分布であり、聞く限り、違和感があるが、このような音声トラックをフランス・ブリュッヘンが発売許可したことが不可解である。
いや、厳密に言うと、持つか申し立てを行っているNaxos of Americaが販売している「音源」の内容は知らないので、あるいは、NHKから、原テープの複製を入手している可能性もゼロではないが、表明されていないので、そうではないと仮定して進める。
Naxos of Americaが保有している権限が不可解というのは、こういうことである。
確かに、収録された映像+音声に関して、指揮者の承認は必要であろうが、著作物としての「映像+音声」に関する著作権、日本国内法で言う著作隣接権は、現在もNHKが保有しているはずである。「はず」というのは、フランス・ブリュッヘンとNHKの間で、当演奏の実況録画の放送に関してどのような契約が交わされているか不明だからである。NHKが保有している著作隣接権に対して、特別な条件が付いている可能性はある。
いや、元に返ると、NHKが制作したのは、テレビ番組とFMの2番組であった。Glossaに対してCD制作が許可されたのは、FM番組に基づくものに限定されたものであったのかも知れない。とはいえ、CD制作会社に、映像付き(動画形態)のライセンスを許諾するはずがないので、Glossaは、映像作品としての権利を持っていないと思われる。
つまり、管理者と自称するNaxos of Americaは、CD音源に関するライセンスをGlossaから順当に継承したとしても、当申し立てを行う権限を有していないものと思われる。
以上を総合して考えるに、YouTubeが、NAXOS Americaの主張を、妥当なものか審査することなく採用して、YouTube動画作者に対して、その「不法な」言い分を取り次いでいるのは、不合理な所行だと思うのである。少なくとも、現時点の日本国内法では、著作権侵害行為の摘発は、権利者のみが行いうるものである。YouTubeは、実質的に、著作権を保有していない第三者でありながら、法的な摘発に等しい行為を行っているものである。
「管理者」側は、企業として活動している以上、著作権に関して造詣の深い「弁護士」と相談して対応することが可能であり、また、売り上げの一部をプールして、著作権に関する法的な対応に投入することか可能である。方や、われわれ一般市民は、知識が限定されていて、資金的にも、時間的にも、対応困難である。してみると、目下、YouTubeが行っている著作権管理制度は、弱者に対する支援を怠っている不公正なものだと考えるのである。
以上
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