« 今日の躓き石 心が進化 | トップページ | 今日の躓き石 六冠王賛 »

2015年12月30日 (水)

今日の躓き石 誰の誓いなのか

                         2015/12/30
 今回の話題は、毎日新聞朝刊大阪第13版スポーツ面の連載囲み記事「上州路からリオへ」の「下」である。
 前回まで言葉遣いの批判を書き募っているので、ボランティア校正担当としては、成り行き上、批判を書かざるを得ないというものでもある。

*見出しのなぞ
 見出しには、「リベンジ誓うエース」とある。
 ここまでに述べたように、目下のスポーツメディアでは、「リベンジ」には、大きく二派に分かれる用法が蔓延っている。
1. 雪辱、報復、仇討ち、お礼参りと言った血なまぐさい意味。やや古手である。
  辞書に載っている直訳から言うと、スポーツ界の殺伐たる言葉遣いに合っているようだが、実際は、スポーツは、友好的なものだから場違いである。

2. 再挑戦の意味。新派であり、目下で言うと優勢のように見て取れる。
  当人には軽い言葉なのだろうが、絶えず、1.の血なまぐさい意味が連想されるので、冗談では済まない。
 と言うことで、スポーツ面の見出しで、このカタカナ言葉を見ても、どちらの意味がわからない。もちろん、こんなことは、辞書に出てはいない。

*解けないなぞ
 新聞記事の常道では、もし、見出しで説明不足だったら、本文の冒頭で解き明かしてくれる、カタカナ言葉の指南番の役どころなのだが、記事自体には、何の噛み砕きもない。わからないものにはわからなくて結構、と言う切り捨てであり、とても、全国紙の報道の姿勢とは思えない。
 見出しのカタカナ言葉は、第二の意味かと見ると、すでに再挑戦が確保されている状況に似合わないので、第一の意味かとも思えるが、この場にふさわしい言葉なのだろうか。

*時代劇調の感慨
 それにしても、「屈辱」とは、何と大時代な書き出しだろう。当人の口から、そういう言葉が出たのだろうか。
 そうであれば、スポーツの世界に個人の見苦しい感情、傲慢とも見える「プライド」を持ちだしているとも受け取れる。と言うものの、それ以降の文には、単に、自責の念が感じられるだけである。不似合いである。
 もちろん、この場合も、新聞記者の誇張という可能性があるが、一般読者は、全国紙の記事を信用するので、そうは思わないのであるが、もし筆が滑ったのであれば、考え直して欲しい。「負けて悔しい花一匁」ではないが、子供の遊びでも出て来る「悔しい」のと「屈辱」の間には、深い谷が横たわっている。
 血なまぐさいカタカナ語を持ち出した大仰な見出しを支えるように、選手の談話のニュアンスを言い換えたとすると、この記事全体が、誇張と言うより、虚報になってしまう。

 別の視点から批判すると、一般読者には、こうした言葉を聞かされて不快に思うものも少なくないだろうし、他チームの選手は、今回の大会を目前にして、前回負けたことについて、こうした言葉を今頃言い立てるとは、情けない奴だと思うのではないだろうか。

*世界に臨む気概
 そして、原点に立ち返ると、この連載記事に求められているのは、オリンピックに臨む意気込みと取り組みである。読者は、いかに当人達にとって重大に感じられていても、国内の駅伝の一走者として、前年負けた国内の相手に勝ちたいとの意気込みを見たいのではなく、オリンピック競技であるマラソンで世界一を狙う取り組みを見たいのである。

 血なまぐさいカタカナ語を持ち出した大仰な見出しは、志の小さいものであり、場違いに見える。

 記事の最後に、とってつけたように、マラソンについて触れているが、フルマラソンに比べて遙かに距離の短い駅伝で勝つことを目指した走行で、全区間を快速でかけ続ける世界のマラソンランナー達に勝つというのか。特集記事は、課題をなおざりにしたままである。
 心理的な「危機感」や「敗北感」を言い立てても収まらないだろう。実力に格段の差があると言うことである。
 当記事は、タイトルに掲げたように、それを埋める取り組みを語ろうとしているのだろうか。
 どうも、担当記者は、大きな勘違いをしているようである。

 毎日新聞は、記者署名記事の校正、校閲をしない慣習でもあるのであろうか。一度発行した新聞は、刷り直しできないのである。

以上

« 今日の躓き石 心が進化 | トップページ | 今日の躓き石 六冠王賛 »

今日の躓き石」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 今日の躓き石 誰の誓いなのか:

« 今日の躓き石 心が進化 | トップページ | 今日の躓き石 六冠王賛 »

お気に入ったらブログランキングに投票してください


2024年7月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

カテゴリー

  • YouTube賞賛と批判
    いつもお世話になっているYouTubeの馬鹿馬鹿しい、間違った著作権管理に関するものです。
  • ファンタジー
    思いつきの仮説です。いかなる効用を保証するものでもありません。
  • フィクション
    思いつきの創作です。論考ではありませんが、「ウソ」ではありません。
  • 今日の躓き石
    権威あるメディアの不適切な言葉遣いを,きつくたしなめるものです。独善の「リベンジ」断固撲滅運動展開中。
  • 倭人伝の散歩道 2017
    途中経過です
  • 倭人伝の散歩道稿
    「魏志倭人伝」に関する覚え書きです。
  • 倭人伝新考察
    第二グループです
  • 倭人伝道里行程について
    「魏志倭人伝」の郡から倭までの道里と行程について考えています
  • 倭人伝随想
    倭人伝に関する随想のまとめ書きです。
  • 動画撮影記
    動画撮影の裏話です。(希少)
  • 古賀達也の洛中洛外日記
    古田史学の会事務局長古賀達也氏のブログ記事に関する寸評です
  • 名付けの話
    ネーミングに関係する話です。(希少)
  • 囲碁の世界
    囲碁の世界に関わる話題です。(希少)
  • 季刊 邪馬台国
    四十年を越えて着実に刊行を続けている「日本列島」古代史専門の史学誌です。
  • 将棋雑談
    将棋の世界に関わる話題です。
  • 後漢書批判
    不朽の名著 范曄「後漢書」の批判という無謀な試みです。
  • 新・私の本棚
    私の本棚の新展開です。主として、商用出版された『書籍』書評ですが、サイト記事の批評も登場します。
  • 歴博談議
    国立歴史民俗博物館(通称:歴博)は歴史学・考古学・民俗学研究機関ですが、「魏志倭人伝」関連広報活動(テレビ番組)に限定しています。
  • 歴史人物談義
    主として古代史談義です。
  • 毎日新聞 歴史記事批判
    毎日新聞夕刊の歴史記事の不都合を批判したものです。「歴史の鍵穴」「今どきの歴史」の連載が大半
  • 百済祢軍墓誌談義
    百済祢軍墓誌に関する記事です
  • 私の本棚
    主として古代史に関する書籍・雑誌記事・テレビ番組の個人的な読後感想です。
  • 纒向学研究センター
    纒向学研究センターを「推し」ている産経新聞報道が大半です
  • 西域伝の新展開
    正史西域伝解釈での誤解を是正するものです。恐らく、世界初の丁寧な解釈です。
  • 邪馬台国・奇跡の解法
    サイト記事 『伊作 「邪馬台国・奇跡の解法」』を紹介するものです
  • 陳寿小論 2022
  • 隋書俀国伝談義
    隋代の遣使記事について考察します
無料ブログはココログ