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2015年12月22日 (火)

今日の躓き石 フィジカルの新展開

                                            2015/12/22
 今回の題材は、毎日新聞大阪第13版のスポーツ面の特集ページ「月刊サッカー」に掲載された、U23代表監督のインタビューである。

 下から二段目で、A代表監督の「デュエル」と言う発言に対して、(口に出されてないが、デュエルで勝つには「フィジカル」で勝つ必要があるとの認識であろう)『「フィジカル」(身体能力)はそう簡単には強くならない』と応じている。お二人の間で、対話は成立しているのだろうか。

 「身体能力」と言う日本語も、かなり漠然としていて、「簡単には強くならない」としているところを見ると、氏の辞書では、筋力、持久力、心肺能力や反射神経など、鍛えようのある部分を指すのであろうが、わかるように語られていない。

 最下段では、U23代表監督の立場として、(口に出されてないが、フィジカル重視の方針には賛成しているようだが)「言い過ぎたらまた危険な状態になると思う。」と語っている。(「また」と言う意味が不明。何が、危険な状態かも不明)

 それにしても、何度、読み返しても、下段の発言の趣旨は不明。担当記者は、これで理解できているのだろうか分かりにくかったら、問い直して、一般人に理解できる文章で伝えるのが、報道の常道ではないのだろうか。

 この記事だけを採り上げると、(毎日新聞社としては)サッカー界で「フィジカル」という不明確なカタカナ語に(身体能力)という統一解釈が成立していと判断しているとの表明のようだが、以上のような状態であり、解けない疑問が残るのである。

 一つには、今回の記事以外では、「フィジカル」は、()なしの言いっ放しになっていて、文脈から察するに、各発言者で、意味がばらついていて、一般人には理解困難となっているのである。今回は、たまたま、このように理解していることを明確に語ってくれたと言うことで、大変ありがたいのだが、まだ、このカタカナ語の先が見えないのである。

 一つには、代表監督が、英語圏の人でなく、また、日本人も英語圏の人で無いと言うことである。本当に、このカタカナ語は、それにふさわしい英語を背負っていて、適確に日本人肉伝えているのかと言うことである。

 懸念する理由は、今回の記事も、「フィジカル」が一人歩きしていて、フィジカル何なのかと言うことが語られていないのである。ご当人が言葉の本来の意味がわかっていないまま、我流の解釈で指導しているのでは無いかと言うことである。

 しばらく前のスポーツ欄の選手インタビューで、指導者から「フィットネス」向上を指導されたという談話があって、これには、いい言葉遣いだと同感したものであった。Fitnessと言う英単語は、いろいろな場所で使われる言葉であるが、この場合は、状況からPhysical Fitnessを言うものと判断されるのであり、省略するとき、自明なPhysicalを略したので、フィットネスだけ聞いても具体的な意味が伝わるのである。適切な言い方と言うべきなのである。

 依然として、当のスポーツで言う「フィジカル」は何を示すのか、不定と思える。

 因みに、今回、代表監督が唱える「デュエル」は、よく言う一対一の競り合いであり、殊更言い立てると言うことは、一対一で勝てるようになれ、と言う指示らしい。以前の「フィジカル、 スピード」に比べれば、理解しやすいが、結局何を求められているのか、不明確である。

 一番強烈な解釈は、「フィジカル」(Physical Contactの略)で相手を吹っ飛ばしてボールを奪えと言うように読めるが、正しい理解なのだろうか。一般人としては、相当足技の達者な選手でないと、どんなときにも、どんな相手にも、一対一で勝てるとは言えないはずである。

 単語明瞭、趣旨不明瞭、という言葉があるが、不明瞭も何も、単語の一発や二発では、一般人には何もわからない。選手には、伝わっているのだろうか。互いに確認できているのだろうか。

 とにかく、代表監督は、自身の指示の真意を明確な日本語で伝えてくれる通訳を必要としているのではないだろうか。母国語でない英語の単語をいくつか言い散らして、後は各自で、辞書を引いて理解しろとし言うのでは、監督の戦略も何も伝わらないのである。

以上

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