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2015年12月28日 (月)

今日の躓き石 「ポスト」六冠王の寂しさ

                                2015/12/28
 今回のテーマは、毎日新聞大阪朝刊の囲碁・将棋面の2015年回顧記事である。ただし、当ブログ記事で話題にしている言葉遣いは、広く当てはまるものであって、特定の新聞社、特定の担当者の心得違いによるものではない。

 お断りしておくと、当ブログ筆者は、子供時代からの将棋ファンであるが、囲碁に関しては、永遠の初心者である。たまたま、将棋記事の隣にある囲碁記事を見ているだけである。要は、当記事は素人のお節介である。
 と言うことで、囲碁ジャーナリズム独特の言い回しに込められた思い入れに通じていないので、心ない部外者の干渉と思われる方もあるだろうが、新聞紙面に書かれている文字は、一般読者が素直に受け取ってしまうものなので、身内向けの言い回しは、感心しないと思うのである。

 今回は、特に前置きが長いのだが、やっと本題である。

 ここ数年になると思うのだが、囲碁界の記事で散見する「ポスト」六冠王「世代」という言い方が気にかかるのである。
 本来は、「」の中に六冠王の実名入りであるが、「今日の躓き石」は、言い回しの不適当さを言いたいだけなので、極力人名を避けるようにしている。もっとも、今回は、まず、他の人と取り違えることはないと思う。当ブログ筆者は、まともに人名検索にヒットして、局地的な話題が広く拡散するのは、好まないのである。

 さて、以前から目障りに思っている「ポスト**世代」と言う言い方であるが、私見では、これは、「**」なるトッププレーヤーが、その世界のリーダーとして長く頂点を占め、斜陽期に入りかけたと見えたときに、次のトッププレーヤーを待望する風潮をかき立てて、うたいあげるものである。大抵、長期安定政権への飽きが、新リーダー待望論を形成するものである。

 しかし、目下の六冠王は20代半ばであり、その力は着々と伸び続けているものと思われる。筆者の通じている将棋界の例から類推しても、圧倒的なリーダーは、時にタイトルの一部を失うことはあっても大きく揺らぐことは少なく、現リーダーが20年を超える長期政権を気づくのも夢ではない。これは、リーダー以外の大勢にとって不甲斐ない話だが、なかなか新陳代謝しないものである。

 六冠王の力が伸び続けている証拠だろうが、回顧されている各タイトル戦での勝ちっぷりは、素人目ながら、抜群のものがあったと感じている。俗な言い方であれば、天下無敵、つまり、匹敵する相手がいないと言うことである。
 この抜群、無敵の強さは、囲碁界最高峰の高みを広く示すものであり、囲碁界の至宝であると思う。俗世では、少数のスタープレーヤーが人気を集めるのが人気商売の成り行きであるが、囲碁界は、実力勝負なので、少数が一人になってしまったと言うことである。

 時に、六冠王の「壁」とまで言われているが、別に次代を担うべき若者の進歩を妨げているのではないと思うのである。六冠王も、生身である。挑戦者に力があれば、乗り越えられるのである。むしろ、目前にこれほどの強者がいるというのは、棋士として生きていく上で、貴重な目標だと思うのである。

 とは言うものの、現実には、後に続くもの達は、この人の伸び行く姿を仰ぎ見て、その足の速さに力不足を歎いているはずであるが、だからといって、追いつき追い越すことを諦めて、トッププレーヤーの衰えを待っているのではないと思うのである。
 「ポスト**世代」と売り物にされるのは、いわば、その他大勢の中での目立ち方であり、当人達にとって、恥ずかしいものがあるのではないか。

 次に、嫌みなことを言い足さないと行けないのだが、天下無敵の六冠王、というのは、国内の話に過ぎない。国際化した囲碁の分野では、世界での地位を意識しなければならない。少なくとも、日本囲碁界の至宝である六冠王も、世界ランキングのトップに立てていないことに対する日本囲碁界の無念の思いが、全国紙での記事の扱いで感じられる。「記事の扱い」とは、その話題が避けられているように見えるからである。

 素人目には、「ポスト**世代」の目指すべきは、その呼称に甘えて、六冠王の凋落、棚ぼたを待って、いつの日にか頂点に立ち、日本囲碁界制覇するのを期待するのではなく、伸び続けている六冠王を踏み越えて、世界囲碁界を制覇することだと思うのである。いや、いきなりでもいいから世界を制覇すれば、六冠王を踏み越えたことになるのである。

 そういう風に見ると、「ポスト**世代」と言う呼び方は、当人達の名誉にならない、青雲の志の乏しい、くすんだ形容だと思うのである。

 この記事は、日本囲碁界のタブーに触れて、当ブログ筆者は囲碁ジャーナリズム界から排斥されることになるかも知れないが、幸い、それで身を立てているわけではないので、こうして嫌みを言うのである。

以上

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