今日の躓き石 セブンズのフィジカル
2016/01/28
当ブログで、スポーツ界における「フィジカル」というカタカナ言葉がかみ砕いた説明なしに報道されているが、意味不明で問題だということを何度も述べている。「問題」というのは、別に言論の自由にかかわる話ではなく、意味不明な言葉では、報道の役を果たしていないということであり、時として、一般読者の外来語嫌いに火をつけているからである。
今回の題材になっているのは、NHKBS-1の7人制ラグビー(セブンズ)特集番組で、何度か「フィジカル」の言葉が聞けたからである。というより、「フィジカル」と別の概念として、「スピードとステップ」が取り上げられていて、番組に登場した二人の選手にそれぞれの特徴として割り当てられていたからである。
つまり、ことセブンズにおいては、「フィジカル」というのは、体のデカさと取っ組み合いの強さに限定されているということで、明快であった。
願わくば、説明なしに言いっぱなしにするのではなく、言い換えてかみ砕く努力をしてほしかったのである。万事心得たファンだけが見ているのではない、新たにこの分野に飛び込んだ初心者も見ているのである。
番組は、「追体験ドキュメント」と題されているものの、使われている言葉が意味不明では、視聴者は、選手の体験を追体験することは困難なのである。
ここで、セブンズのフィジカルと限定するのは、15人制ラグビーの報道では、フィジカルは、体格のデカさはもとより、スピードや耐久力に重きを置いた、かなり幅広い「体力」を指していることが多いように思うからである。
視点を広げると、同じフットボールの範疇でも、取っ組み合いのないサッカーでは、当然、「フィジカル」は、同じ意味ではないようである。
他分野での意味について明快に言 えないのは、それぞれの解説者、新聞記者において、言葉の使い方に個人差があるからである。いや、言葉をかみ砕いてくれたら、その場限りの意味を受け止められるのだが、言い返してくれることはほとんどなく、報道の趣旨は、宙に浮いているのである。
この番組の冒頭に、次々と単語や短文が表れて、スポーツにおいて要求される特徴を網羅しているように思うのだが、見ている限りでは、単なる「Physical」や「Mental」のような断片言葉(かたこと)は登場していないようである。英語のままであるが、ちゃんと、辞書を引いて意味を察することができる言葉のように見える。ついでながら、"Tenacity"なる単語は、非英語圏住民からは、なかなか出てこない意義深い言葉である。
こうした配慮ができるのに、なぜ、番組本体で、無頓着な言い方をするのだろうか。
全国紙の報道に対しても、文句をつけているのだが、何とか、一般読者泣かせの、意味不定の業界用語は、説明なしに使わないようにしてほしいものである。
以上
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