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2016年2月11日 (木)

今日の躓き石 球界カタカナ語汚染

                                2016/02/11
 今日の題材は、毎日新聞朝刊大阪13版のスポーツ面である。
 しみじみ思うのだが、毎日新聞はスポーツ面のカタカナ語汚染について、「雑草の生い茂るのに任せ」ているのだろうか。新聞社として、一般読者が理解に苦しむカタカナ語の使用を抑制するよう「言い換え」を勧めていると思うのだが、スポーツ面だけは、執拗に雑草が伸びているのである。治外法権なのだろうか。

 今回は、メジャーリーグで力強く戦い続けている「赤靴下」闘士の紹介記事である。ただし、「カタカナ語」は、当人のせいではないと思うので実名は出していないが、誰の記事かはすぐわかるはずである。

 今シーズンは、(曰く付きカタカナ語)「セットアッパー」に配置転換されるという。ご丁寧に解説が付いているが、この言葉は、そういう丁寧な扱いをすべき言葉ではない。無用なカタカナ語を認知していては、署名記者の見識を疑われるのである。

 カタカナ語の問題は、英語としてまともな言葉をカタカナにしているような錯覚を広げるところに問題がある。大変耳障りだから、新語を使っているような痛快な感覚を与えるところも問題である。偏見と取られそうだが、個人的には、言葉に無頓着なスポーツ紙が使い始めたのではないかと思う。

 セットアッパーとは、セットアップをする人という趣旨であろうが、それは、英語として間違った言い方である。いや、セット アップ(set up)は、動詞+前置詞という、ごくごくありふれた構成の成句であり、多種多様な場所で、多様な意味に使われるので、正しいだの、間違っているだのと、傍から言えるような言葉ではない。
 問題は、「パー」である。(ここで言うのは蔑称のパーではない

 米語の俗語で、動詞でもない言葉にやたらにerを付けるのが悪弊になっているが、それは、まともな英語ではないので、何も考えずにまねて一般人の一般の会話で使うと、顰蹙を買うし、ビジネスの世界のビジネス会話で使用すれば、無教養、粗野という蔑視を受けかねないのである。まじめな英会話学生が、学習の書記で、手ひどくつんのめる「躓き石」の定番である。

 じゃあ、どう言うのかという事になる。NHKのように、「セットアップマン」と言い換えるのは、お行儀は良いとしてもぎこちない話である。これでは、女子野球では「セットアップウーマン」と言わざるを得ない。いかにも、日本人英語である。
 正統派のアメリカ人は、「セットアップ」(名詞)と言うはずであるが、実例を知らないので、こう推測する。He is a BoSox setup.

 当ブログ筆者が、専ら毎日新聞をやり玉に挙げて手厳しいのは、一つには、忠実な宅配読者であって、他の日刊紙を見ていないからである。多分、他紙も、用語面の厳しさ、緩さはは同様だと、勝手に想像している。

 そして、また、毎日新聞に天下一の言葉の護り人の役目を期待しているからでもある。たとえ一人の記者の軽率な記事であっても、数百万の読者が読む紙面で使われた言葉は、数百万の読者の多くがお手本にするからである。数百万の読者に広がった言葉の汚染は取り返しが付かない。
 そして、その向こうに理解できないカタカナ語で悩まされる善良な読者の嘆きが聞こえるのである。

以上 

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