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2016年2月24日 (水)

今日の躓き石 毎日新聞「柳に風」の不調 司馬遼太郎礼賛の是非

                                      2016/02/24
 本日も、例によって、唯一宅配購読している毎日新聞夕刊大阪3版の記事であるが、別に糾弾するつもりはない。先だってのように、経験豊富な編集委員が、自身の権威のもとに、これほど公的な場所でコンプライアンス違反の見解を押し立ているわけではないからである。単なる勘違いである。

 とは言え、夕刊編集長というご高名の割に、余りに「幼い」見解なので、ご意見申し上げるのである。
 「柳に風」の美名のもとに提示されているのは、頑迷な意見であるので、批判せざるを得ないのである。

 さて、今回の記事で、編集長殿は、司馬さん(敬称付きである)の大作「飛ぶが如く」と「坂の上の雲」を読んで、一も二もなく著者のご託宣に迎合してしまったようである。いや、正直そのまま表明しているのだから、別に何も批判すべきではないのかも知れない。しかし、夕刊編集長の名の下に、でかでかと書かれている「勘違い」、「早合点」、「浅慮」は、公器にふさわしくないものなので、正直に批判せざるを得ない。

 まず大きな勘違いは、上げられた二作は、「フィクション」であると言うことである。言うならば、作者の視点でこね上げられた小説(個人的見解)であって、別に、厳然たる「史実」として提示されているわけではない

 定説は定説、新説は新説、どちらも、濃い薄いはあっても、フィクションなのである。

 以下、「例えば」として得々と言い立てているのは、筆者の意見を傾聴する限り、司馬氏の自作のフィクションで古いフィクションにぶつかっているわけで、どっちもどっちである。新説を聞いて、定説を一気に捨ててしまうのは、知的な態度ではない。

 次に出て来るのは、記事筆者の要約であるが、どうにも短絡的な傾倒で、司馬氏ご当人が聞いたら辟易しそうである。

 西郷隆盛が、西南戦争で陣頭指揮をしていなかったので幻滅したようであるが、どんな幻想を抱いていたかは本人の自由として、西郷は、終始自軍と行動をともにし、最後は、(責任をとって)前線に乗り出して自決しているから、何も卑怯者、卑劣漢として非難すべきところはないように思う。なぜ、そこまで幻滅し、大声で非難するのかわからない。

 また、日露戦争の旅順要塞攻撃の頑固な強攻策は、前線指揮官乃木の裁量を超えた上部からの「強攻」、早期攻略至上の指示が原因であって乃木の責任に期すべきものではないと思う。
 司馬氏の世界観の影響力の余りの強烈さに辟易した小説家が、酸の大海にコップで中和剤を投入する意図で、他ならぬ毎日新聞に、乃木擁護の小説を連載したように思う。筆者は、愚将糾弾の情報しか読まないのであろうか。

 遙か後世になるが、太平洋戦争後半の山場、硫黄島の攻防で、米軍が、頑強な日本陣の攻略に、目を疑うような単調な攻撃で甚大な被害を出したことを見れば、こうした状況で、早期攻略を至上命令として受けたとき、軍人は、多数の人命の無駄としか見えない消費をもたらす強攻策にしか解決を見出せないことは、軍事戦略家の基本常識のように思える。少なくとも、米国司令官を拙劣、愚将とした非難は聞かない。

 当記事筆者は、司馬氏の深々とした洞察溢れる著作を、自身の理解力の赴くままに何とも単純な歴史観に読み替えたと言うことを、数百万読者に押しつける形で公開したことになる。

 それにしても、ご当人がここに連ねたブログ記事を読んで、反射的、感情的に全面拒否したら寂しいが、かといって、反射的、感情的に、ここに公開した見解が反転するとしたら、それも、恐ろしいものがある。

 

夕刊編集長殿の、強烈で、幅広い影響力を思うと、他人の意見は、話半分に聞いて、自身の考えを広く、深く形成して欲しいものである。

以上

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