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2016年3月 3日 (木)

今日の躓き石 三角縁神獣鏡 中国で「発見」?

          私の見立て☆☆☆☆☆              2016/03/02

 今回の題材は、毎日新聞大阪朝刊第13版の「オピニオン」面である。「オピニオン」は、本来、個人個人の意見であるから、ここで麗々しく批判するのは好ましくないのだが、「記者の目」欄は、毎日新聞記者の意見を堂々と公開しているので、報道のプロとしてふさわしい記事かどうか、一読者として批判できると思うのである。

 特に、今回の記事は、古代史にまつわるものであり、当ブログ筆者が、普段気にかけている「魏志倭人伝」に深く関係したものなので、一段と関心を引くのである。なお、以下、特に注記しない限り、「鏡」とは、その産地が話題になっている「三角縁神獣鏡」である。

 さて、記者の書きぶりは、両論を紹介し、概ね公平なもののように見える。別の全国紙の特定の記者の偏向ぶりが、安本氏主催の季刊雑誌「邪馬台国」で、繰り返し酷評されているから、慎重に書こうとしているのだろう。

 しかし、当記事の書きぶりに、不思議なよどみがにじんでいて、素人目にも、「中国での出土が」(一枚でも)「確認されれば」「製作地論争を」(一気に)「中国鏡説に導く」、と書いているように見える。業界でささやかれている「一打逆転」とか「キャスティングボート」とか、科学と無縁の概念が漂っているように見えてしまう。
 
()内の独り言は、書かれてはいないが、文脈から自然に想定されるものであり、こうした思いが記者の内心にあるとすれば、それは情緒的な「判官贔屓」であって、客観報道から逸脱しかけているのである。
 そうした内心の声をふるい落として読んでも、今は国産説が非勢であるが、今回の「発見」の評価次第で、一気に逆転すると見ているようにも見える。
 このような揚げ足取りをされないためには、もっと、筆を真っ直ぐにして書く必要があるのではないか。

 また、毎日新聞ほどの見識があるなら、以下の記事で滔々と述べている(聞くだけでうさんくさい)「骨董品」を容認したいという意見の傍ら、大変大事な議論が抜けているのを自覚しているはずである。

 「中国鏡」と言うからには、「鏡」が中国で「製作された」と立証しなければならない。

 一枚どころか、何十枚と中国国内で「発見」されたとしても、その由来は、日本から中国に渡った使節、僧侶、商人が、何個か「手土産」で持参した可能性が、かなり高いとみるのが自然ではないだろうか。
 国産鏡説の流れに従って当時千枚、二千枚といった大規模な数で「国内」生産されたとすれば、物の道理として、数の多いところから、少ないところに物が流れていくのは自然ではないか。「手土産」説とでも言うのだろうか。
 何しろ、製作当時から(百年代を四捨五入して)2000年近く経っているのだから、ひょっとして、何百枚と持ち込まれていても、不思議はない。
 念のためいうと、この考えは、当ブログ筆者の独創ではなく、故古田武彦氏が生前「予言」したものである。
 氏は、国産鏡説を支持していたが、一方で、いずれは、国内出土品と同一形状の鏡が中国で出土するだろうと予言していた。その理由は、以上に述べた趣旨である。「まだ発掘されていないが、きっと出現する」とはよく聞く言葉だが、この「予言」では意味が違っている。

 端的に言うと、鏡は、鋳物なので、数多く作るためには、結構な数の鋳型が必要である。
 中国鏡説を確立するためには、そうした鋳型の発掘が必須だろうし、それが望めないなら、同形状の鏡が複数「発掘」されることが必要ではないだろうか。

 そうでなければ、複数の「発見」であろうと、「出土」であろうと、「手土産」説が幅を利かすことだろう。

 国内鏡説の窮地を救う一枚を「徹底的」に追究するのは結構だが、ちゃんと筋の通った評価と議論をすべきだと思う。それが、科学的な態度である。

 当ブログ筆者は、国産鏡説が合理的であり、中国鏡説には無理が多いとみるが、中国鏡説に合理的な論拠が確立されたら、意見を変えるのにやぶさかではない。
 別に、持論に名声も生活もかかっていないので、意見を変えても、何も失うもはないから、そう言えるのである。

以上

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