« 今日の躓き石 競泳界を徘徊するメンタル怪物 | トップページ | 今日の躓き石 凡退したら次打席で「リベンジ」???? »

2016年5月19日 (木)

毎日新聞 歴史の鍵穴 学説紹介の不手際

 =専門編集委員・佐々木泰造
 私の見立て☆☆☆☆☆☆ 「無法な」ホラ話  2016/05/19 再掲 2024/04/17

*加筆再掲の弁
 最近、Amazon.com由来のロボットが大量に来訪して、当ブログの記事をランダムに読み囓っているので、旧ログの揚げ足を取られないように、折に触れ加筆再掲していることをお断りします。


◯はじめに
 毎日新聞夕刊文化面の月一連載記事であるが、相変わらず、専門編集委員・佐々木泰造氏の学識、と言うより、常識に対する疑念を募らせるものであった。手違いで公開が五日ほど遅れたが、本来、学説紹介のツボを外した記事の他愛のない杜撰さに即応したものである。

 当方は、無名の素人であるから、持ち合わせている一般常識しか頼るものはないのだが、科学的な論説で、まず問題になるのは、データの信頼性と分析の信頼性である、と考えるものである。それが、健全な批判というものではないだろうか。

 厳しい言い方になるが、この記事で紹介されている限り、百々氏の科学的研究は、科学的と呼べないものに見える。念のために言うと、当方は、百々氏の学説そのもののの是非について云々しているのではない。紹介された姿を論じているのであり、つまり、紹介の不手際について指摘しているものである。

 百々氏の研究は、各地で出土した人骨の観察に基づくものと言うことだが、研究した標本の数量が統計的に有意な数量かどうか、と言った基本的なことすら批判、検証されていないので、氏の主張を信じて良いかどうかわからない。

 続いて、百々氏は、ミトコンドリアDNAの研究成果を見て、結論に対して修正を迫られ、頭骨の分析をやり直したところ、掲載されている図のような分析結果を得て、新たな結論を得たと言うことである。

 つまり、百々氏の科学的分析は、得られるデータが分析者の先入観によって左右されるものであり、また、ドイツ標本に対する追試確認がされていない、と見えるので、学説として信を置くことができるかどうか不明と言える。

以上

 また、記事に麗々しく掲示されている図は、二次元相関図紛いの形式で書かれているが、表現されているデータ数値およびその単位が書かれてない。また、縦軸、横軸が、データの数値に対して、線形なのか対数なのか、示されていないし、原点がどこか示されていない。と言うことで、図上の位置関係が何の意義を持っているかわからないし、互いの遠近の意義もわからない。
 それぞれのデータがほぼ一点で表現されているが、これは信じがたいものがある。こと、人体に関する測定で、個体間にバラツキのないデータはないと思うのである。それとも、各測定値は、一体の人骨に基づくものなのだろうか。

 

 してみると、これは、科学的なデータ表示てはなく、単に百々氏の「印象」を図示したものとも思われる。
 こう言ってしまうと、ご当人から「冤罪」の声が聞こえそうであるが、この記事を読む限り、そう思わされてしまうのである。毎日新聞の専門編集委員の紹介であり、毎日新聞夕刊に掲載されているのだから、正確に報道されていると見るしかないのである。

 

 正直言って、今回紹介いただいた百々氏の科学的研究は、氏の長年の学究生活の集大成であり、科学的な裏付けが備わっているのであろうが、今回の記事では、紹介者の無頓着な態度で、これまでの連載で紹介された疑問の多い諸説と同列に不信感を持って受け止めざるを得ないのは残念である。

 

 専門編集委員の書いた記事原稿なので、紙面編集の際の校正がされていないのかも知れないが、非科学的な態度で書かれた記事が連載されるようでは、毎日新聞に対する信頼性が損なわれているように感じるのである。

 

 

以上

« 今日の躓き石 競泳界を徘徊するメンタル怪物 | トップページ | 今日の躓き石 凡退したら次打席で「リベンジ」???? »

毎日新聞 歴史記事批判」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 毎日新聞 歴史の鍵穴 学説紹介の不手際:

« 今日の躓き石 競泳界を徘徊するメンタル怪物 | トップページ | 今日の躓き石 凡退したら次打席で「リベンジ」???? »

お気に入ったらブログランキングに投票してください


2024年9月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          

カテゴリー

  • YouTube賞賛と批判
    いつもお世話になっているYouTubeの馬鹿馬鹿しい、間違った著作権管理に関するものです。
  • ファンタジー
    思いつきの仮説です。いかなる効用を保証するものでもありません。
  • フィクション
    思いつきの創作です。論考ではありませんが、「ウソ」ではありません。
  • 今日の躓き石
    権威あるメディアの不適切な言葉遣いを,きつくたしなめるものです。独善の「リベンジ」断固撲滅運動展開中。
  • 倭人伝の散歩道 2017
    途中経過です
  • 倭人伝の散歩道稿
    「魏志倭人伝」に関する覚え書きです。
  • 倭人伝新考察
    第二グループです
  • 倭人伝道里行程について
    「魏志倭人伝」の郡から倭までの道里と行程について考えています
  • 倭人伝随想
    倭人伝に関する随想のまとめ書きです。
  • 動画撮影記
    動画撮影の裏話です。(希少)
  • 古賀達也の洛中洛外日記
    古田史学の会事務局長古賀達也氏のブログ記事に関する寸評です
  • 名付けの話
    ネーミングに関係する話です。(希少)
  • 囲碁の世界
    囲碁の世界に関わる話題です。(希少)
  • 季刊 邪馬台国
    四十年を越えて着実に刊行を続けている「日本列島」古代史専門の史学誌です。
  • 将棋雑談
    将棋の世界に関わる話題です。
  • 後漢書批判
    不朽の名著 范曄「後漢書」の批判という無謀な試みです。
  • 新・私の本棚
    私の本棚の新展開です。主として、商用出版された『書籍』書評ですが、サイト記事の批評も登場します。
  • 歴博談議
    国立歴史民俗博物館(通称:歴博)は歴史学・考古学・民俗学研究機関ですが、「魏志倭人伝」関連広報活動(テレビ番組)に限定しています。
  • 歴史人物談義
    主として古代史談義です。
  • 毎日新聞 歴史記事批判
    毎日新聞夕刊の歴史記事の不都合を批判したものです。「歴史の鍵穴」「今どきの歴史」の連載が大半
  • 百済祢軍墓誌談義
    百済祢軍墓誌に関する記事です
  • 私の本棚
    主として古代史に関する書籍・雑誌記事・テレビ番組の個人的な読後感想です。
  • 纒向学研究センター
    纒向学研究センターを「推し」ている産経新聞報道が大半です
  • 西域伝の新展開
    正史西域伝解釈での誤解を是正するものです。恐らく、世界初の丁寧な解釈です。
  • 邪馬台国・奇跡の解法
    サイト記事 『伊作 「邪馬台国・奇跡の解法」』を紹介するものです
  • 陳寿小論 2022
  • 隋書俀国伝談義
    隋代の遣使記事について考察します
無料ブログはココログ