私の本棚 04B 大塚初重 邪馬台国をとらえなおす -補足
現代新書 2012年 2016/06/16 追記 2020/03/20
私の見立て ★★★★☆ 追記 2020/03/20
〇反省の弁
前回書評めいた記事を書いたときは、色々、書きぶりのアラが眼について、多少偏った評価をしてしまったが、それ以降の読み返しで、言い過ぎを訂正する必要を感じたので、ここに、補足記事を書き足すことにした。
ただし、前回記事は、その時点での筆者の理解を記録した記事と言うことで、明らかな誤字、誤記の訂正以外は、削除も加筆もしない。ご了解いただきたい。
まず、本書の倭人伝逐条解説全体の論説が、水野祐氏が監修した現代語訳に基づいているので、現代語訳の読み取り方に影響されていることは仕方ないところである。正直言って、それが「現代語訳」の困ったところである。学術的な論考であるから、せめて、複数の現代語訳を、異本として参照していただきたいものである。
とは言え、いわゆる「定説」なる矮小な世界観に囚われることなく、ご自身の豊かな見識をもとに読み解いていることが多いのは、前回見過ごしていたのを大いに反省している。
*歴韓国
例えば、倭人傳行程記事の劈頭、「従郡至倭」の下りで、「歴韓国」を、「韓国(馬韓、弁韓、辰韓)を歴て」と読み取っているのは、当方が、最近ようやく到達した心境であり、原文に忠実という点が共通しているのだが、「新説」に先人あり、(新説と力んでも、大抵は「二番煎じか」それとも、「屑」である、との定見)と、脱帽するのである。
しかも、この下りの解釈で定説となっているが、近来有力な批判の出ている沿岸(海上)航行説について何も触れない、という賢者の振る舞いである。
*「自然科学による年代決定」への態度保留
大塚氏は、文献史学者でないため、学界の儀礼に従ってか、その道の「専門家」の意見に逆らう主張をあからさまに打ち出してはいないし、考古学者として、古墳時代の時期を大巾に繰り上げるとされている現代「科学的」年代観についても、「自然科学による年代決定と文献記載事実のとの相違については将来の検討に待つことになろう。」と明言を避け、殊更に批判を加えているわけではないが、深読みすると、同意できないという確信めいたものを感じるのである。
こうした大塚氏の慎重な書きぶりを理解できなかったために、手厳しい批判書評をものにしたことについて、いささか反省しているものである。
以上
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