毎日新聞 歴史の鍵穴 意図不明な紹介記事
2016/06/15
今回は、当ブログ筆者が毎月躓いている毎日新聞夕刊文化面の月一記事である「歴史の鍵穴」の6月分記事である。
麗々しく題して「風神雷神屏風」の意味として、日本美術史研究家の近刊書籍の打ち出した新説を紹介している記事のようである。
しかし、不勉強な当ブログ記事筆者には、この記事を見ただけで、見て取れるものは、モノクロの縮小図版、しかも、左半分だけでは、どんな絵画+揮毫なのか、皆目わからない。
記事は、紹介の念押しもなしに、いきなり、林氏の新説の引用というか紹介で始まり、肝心な、打倒されるべき従来「通説」と対比されていないので、どこがどう異なるのか、読み取れない。何のことやらわからないのである。
どうも、建仁寺所蔵の貴重な屏風絵である、「風神雷神図」と呼ばれる国宝屏風絵らしい図の部分紹介、解説と見えるが、とても、この図はキャプションに書かれているような「高精細デジタル複製」には見えない。いずれにしろ、当図版から、「鉢巻き」、雷神が乗る「黒雲」、雷神の赤い肌でない「白い肌」、の特徴は、とても見て取れないから、無意味な図示である。
いや、今回の記事全体に、どこが、林氏の所説なのか、どこが、紹介者の解釈なのかわからない。これでは、一般人読者は、「五里霧」の深い霞の中を引き回されているようで、困惑するのである。これが書評であれば、通説と対比する形で新説を逐次紹介し、新説の主張の論拠を示す形になると思うのだが、これは、なんなんだろう。
例えば、当記事筆者は、相当の達人で高名だったはずの「宗達」の同名異人が存在したという憶測を書き立てるだけで、それ以上、何の掘り下げもせず、二人「俵屋宗達」だったものと納得しているようである。大事なポイントのように思うのだが、記事は、何もつかえずに通り過ぎるだけである。ご不審の方は、記事の実物を読んでいただきたい。
そういうわけで、林氏が、新発見の角倉素庵書状の解釈によって、そこに絵屋『俵屋』の宗達が示唆されているというのだが、「織り元『俵屋』の宗達」と「絵屋『俵屋』の宗達」が同時代に生きていたという説を打ち出したようなのだが、この紹介記事のゆるゆるの書き方では、林氏の論証そのものを確認しない限り、にわかに信じがたいものがあるとしか言いようがない。紹介になっていないのである。
当連載記事の定番で、確認不足の紹介を投げつけられては、筆者が、被紹介者の説に賛同していると言うことくらいはわかるが、その賛同を生み出した意義・意味が読み取れないのが、ほぼ毎回である。
しみじみ思うのだが、他の読者諸兄は、記事の意図をすんなり受け止めていて、わからん、おかしいと言い続けているのは、当ブログ筆者だけなのだろうか。
今回も、書いていて、途中で途方もない徒労のような気がしたが、これまでの記事の扱いと調子を大きく変えることはできないので、意気を奮って書いたものである。
以上
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