今日の躓き石 謎の「メンタル」―ハリルホジッチ流
2016/08/30
今回の題材は、毎日新聞大阪12版のスポーツ面、男子サッカー特集である。
ハリルホジッチ監督は、最終予選に先立ち、提言書を作成したという。日本語訳であろうが、例によって「メンタル」「フィジカル」も書かれているようで、翻訳として筋の通ったものなのか疑問である。何しろ。監督は、英語を母国語としてないから、mental,physicalという、英語形容詞の一人歩きにも平気なのだろうが、日本語のカタカナ語の意味の不確かさを承知の上で、強行しているのかどうか、本人に聞かないとわからないところである。
「メンタル」では、(対戦相手より世評が低くても)「勇気」「自信」を持つことだと教えているようだが、スポーツ界一般では、「メンタル」は、「心の」弱点の改善策のように聞こえることが多い。サッカー界独自、ハリルホジッチ監督独自の言葉で貫くのだろうか。引用されている談話によれば、日本の選手の長所を伸ばすものだそうだが、ということは、既に「勇気」「自信」がたっぷりあるので、更に伸ばせと言うことなのか。一つの談話として、言葉の意味がぐらついているようで、不可解である。
一読者としては、結局、技術論、戦術論などと言い立てても、頼りは精神論なのかと思うのである。或いは、負けたときに、精神面に敗因を持っていけば、監督の責任ではないと言うことなのか。芳しくない感想であるが、正直そう思えるのである。
今回の記事は、紙面の1/4ほどを占めていて、特に締め切り時間に追われたものではないし、字数もたっぷりあるので、監督のハリルホジッチの「メンタル」を聞けると思ったのだが、「勇気」「自信」のお題目だけで、日頃の練習でそうしたものをいかに強くするかと言うことが説かれていないのは、相変わらず、懸濁状態である。
誰だって、代表選手として戦う以上、どんな相手にも勇気と自信を持って、ぶつかっていきたいと思っているはずである。それでも、時に気後れするのだから、そうならない何かが必要と言うべきではないのだろうか。「提言書」を読んでも、へえそうですかで終わるのではないか。
そうそう、相棒の「フィジカル」などは、なんの説明もなしである。
今更、後十センチ背を伸ばせと言われてもどうしようもないし、もっと筋力強化せよというのか、たっぷり食べて体重を増やせ、ということなのか、(審判に見えないように)相手を引きずり倒す格闘技の訓練をせよというのか、今更指図する意味がわからない。
このあたり、メディアの担当記者が監督に対して掘り下げないし、自分の理解を一般読者にわかりやすく、素直に伝えないから、この記事を読む前によくわからなかった「フィジカル」、「メンタル」が、読み終わってもわからないままである。意味のわからないカタカナ語に対する読者の苦情に、もっと真摯に対処すべきではないのかと思う。
以上