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2016年8月11日 (木)

私の意見 景初倭国遣使を巡る異説 4

                2016/08/11
 承前
3.議論の核心
*「中和倭國」説の無理
 以上の行程見積もりは、定説の見方に比べて、かなり日数を要しているように感じられるかも知れないが、三世紀前半、特に急を要する移動/輸送手段が求められないクニの離散分立状態では、その程度の移動しか出来ないと見ているのである。
 離散分立と言うのは、後年のようにクニとクニが互いに接することなく、その間に未開地が存在する状態を言うのである。未開地は、必ずしも、無人地帯ではないが、いずれの国の指示も受けていない「非文明人」であれば、クニの通達を知らず、通貨も知らず、多数の旅人を遇することを知らないのである。

 こうした境地にあるクニとクニの間の未開地を数日を要して移動するとすれば、その間は、食料の得られない野宿になる。当然、そのような境地を過ごして旅するためには、最低限の夜具と食料を担いで移動することになる。
 もちろん、野獣の襲撃、盗難などに備えねばならない。重武装が必要となるが、武装した旅人の侵入は、地域住民の警戒を招くので、何らかの通行証が必要であろう。

 陸上交通では、このように、街道が未整備であれば、当然宿駅は未整備で野宿込み、その上、騎馬も駄馬もなしと来れば、ひたすら、荷物、食料、武装の全てを担って歩くのである。

 海上交通では、沿岸航路が未整備であれば、船足は潮、風任せ、つきものの嵐には平伏するしかない。上陸しての休養がとれず、船載の水や食料だよりとなると、荷重が大きく加わり、自身の食料も増えてくることから、漕ぎ船の漕ぎ手達の体力消耗は深刻となる。急行は出来ず、徐行せざるを得ないのである。

 こうした事態を見ると、筑紫―中和間で、急を要しない、事故を覚悟した通常の便ならともかく、失敗や遅配の許されない高官の移動や財宝の輸送便が、旅人を導き、助けてくれる暦も羅針盤も地図も海図もなかったと思われる古代に、どうすれば確実、かつ迅速に運用出来るのかと悩まされるところである。

*緩やかな立論
 いや、以上は、勝手な推定の積み重ねであるが、推測を重ねる中で浮かび上がった概念として、海峡南岸の筑紫を所在地とする筑紫倭国なら、緊急かつ重大な事態に即応できるが、大事件の現場を遠く離れた遠隔地の中和倭国では、事態の重大性を理解するのは至難であり,即応どころか、ゆったりした対応すら至難、事実上不可能であることが感じ取れたら幸いである。

 してみると、「中和倭国」説は、発展途上の三世紀倭国に、延々と街道制度が整い、併せて整然たる文書行政の整った古代国家を見ているものであり、三世紀の文字無き倭国は、数世紀の規模で時間的に立ち後れているのである。

未完

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