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2016年8月12日 (金)

個人的資料批判 神と神を祀る者 ムラからクニへ 11/11(完)

 日本文学の歴史 第一巻 神と神を祀る者  昭和42年5月10日刊
 ムラからクニへ  執筆者 小林行雄 (1911年8月18日 - 1989年2月2日 文学博士)

          私の見立て★☆☆☆☆        2016/08/12
                 以外★★★☆☆

承前

 以下、更なる余談である。あちこち探し回っていると、ぞろぞろと余談が流れよってくるのである。言うまでもなく、随想であって、何かを主張する意図で書き留め値ものではない。

*倭国温暖 常春の楽園
 倭人伝で、倭国の亜熱帯かと思わせる温暖さが強調されている点については、「東夷伝」の史料としての構成を見るべきである。遙か、扶余、高句麗、韓と続いているが、概して、寒冷地なのである。三韓の南部は、倭国に近いが、東夷伝の読者になじみ深いのは、西域、匈奴、烏丸の居住地の乾燥、そして、高句麗、楽浪、帯方の冬の厳しさと思われる。

 半島から南へ三度の渡海で到着した倭国は、それまでの韓諸国と異なり、一年を通じて温暖であり、夏の暑さは、むしろ、華南の湿潤な亜熱帯風土を思わせると言いたかったのであろう。

 このような温暖で湿潤な風土であれば、水田耕作で、そこまでの諸東夷に比べて、豊富な収穫を得られる風土を示唆しているのである。その結果は、倭国内の各国の戸数にも示されている。戸数の多さから知れる人口の多さは、農業収穫の多さの反映で有り、倭国は豊穣の地と頌えているのである。

 こうした水田稲作の効用は、それまでの中原人の常識では、不毛の辺境とされた蜀や呉の打って変わった豊穣さに通ずるものがあったのではないか。三国志で描かれる中原の諸勢力の抗争で、食糧不足が、戦闘継続を不可能にするほど、飢餓が蔓延していたのを思い起こすのである。

以上

*献上品と下賜品
 これも珍しいことではないのだが、執筆者は、景初の初回遣使の成り行きについて解説する際に、「献上品と下賜品とは、右のように量・質ともに、はなはだしくふつりあいである。それは魏が大国の威勢を誇示しようとしたものか、あるいは、呉に対抗するために東辺の無事を願って、日本の懐柔をねらったものか、その真意は『魏志』の撰者も明らかにしていない。

 

 「量・質ともに、はなはだしくふつりあい」とご高評を戴いているが、古代に於いて、弱小な蛮易と中華大国との価値観は、まったく隔絶したものであり、はるか後世の第三者がとやかく言うべきものではない。「夜郎自大」の故事を別にすれば、大国の威勢は、誇示しなくても、来訪者が目を開いていれば、いやでも見て取れるのである。

 

 大体が、当時の朝貢に対する下賜物としては、「卑弥呼個人への贈物」なる、初回貢献限定の大量の下賜物を除けば、異例な厚遇ではないと考えるものである。もちろん、当時の貨幣価値でどうかなど、わかるはずもないのだが、中国人の感じる価値の数倍、数十倍、...に感じられたのではないか。
 それこそ、中国側にすれば、「奇貨居くべし」。大当たりすれば、何百倍の見返りもある、大変なコストパフォーマンスとなったのではないか。

 また、宝物ともいえる財貨物が列記されているものの、ことさらに新規制作したものではなく、宮廷の宝物庫の在庫処分であったはずである。別記事に書いたように、当時の魏朝財政は、稀代の浪費癖を発揮した第三代曹叡の暴政で、破綻寸前の火の車だったという。とにかく、このあたりの機微は、現代人にわかるはずはないのである。

 

 もちろん、皇帝の証書は複写できても、天子の真意は、表明も記録もされないから、いくら史官が望んでも、いや、偉大な後世人が望んでも、わからないものは書き残しようがないのである。率直なところ、余計なお世話である。

 

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