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2016年9月18日 (日)

私の本棚 歴史読本 2014年7月号(2)特集 謎の女王 卑弥呼の正体

                          2016/09/18
               株式会社 KADOKAWA
承前

*魏志評価
 倭人伝記事は、西晋史官陳寿が、史記、漢書、に続く第三の歴史書として後世に残すべく編纂した史書「三国志」の一部である。

 三国志は、編者陳寿の没後、西晋皇帝に上申されて勅許を得たものであり、東晋、およびそれ以降の歴代王朝に於いて、まさしく、史記、漢書に劣らぬ歴史書として、言うならば国宝扱いで継承されたものである。

 このようにして上程された言うならば陳寿原本は、下って、南朝劉宋王朝に於いて、裴松之が校訂し、詳細に亘る注釈を加えた所謂「裴注」版が劉宋皇帝の認可を得ることにより、完全に置き換えられたと言える。従って、以下は、「裴注」版が、(決定版)三国志原本として継承されたのである。

 裴松之は、もちろん、完全無欠ではないが、国名論を含めて、世上で言われる「誤記」については、一切注記を加えていないところからみて、そのような「誤記」に因る写本間の異同は、見つかっていなかったとみるべきである。

 このようにして、(国宝扱いの決定版)三国志原本を原典とした厳格な校正を加えた写本継承が続いたことから、世上で危惧されているような粗雑な誤記の無い形で長く継承されたとみるべきである。

 以下、十一世紀になって、晩唐期に始まった乱世を統一して天下太平の世をもたらした宋王朝が、その時点までに編纂、上程されていた史書(正史)全ての決定版を木版印刷で出版するという大事業に着手したのである。

 決定版確定のため、帝室および国内各地に継承されている良質写本を総結集し、帝國最高の人材を動員して、それぞれの「正史」の各種写本を相互確認し、校訂作業を行ったのである。実に膨大な努力であり、控えめに言っても、「空前絶後」の文化事業と言える。
 遙か後世、異民族の征服王朝である清朝が行った「四庫全書」事業だけが、辛うじて比較しうるものであろうが、宋朝の空前の努力は高く評価されるべきであろう。

 この大事業は、いかに帝国の総力を挙げたとは言え、さすがに全正史一斉開始とは行かず、まず史書の中では最優先の「史記」、「漢書」、それに(後進ながら時代順で割り込んできた、劉宋笵曄編纂後漢書に、唐代章懐太子注の付いた決定版)「後漢書」の無上の三史の決定版が確立され、順次刊行に移されたのに続き、三国志も、いわば、決定版「三国志」として確立されて、刊行の運びとなったのである。

 手短に言えば、その時点以降の三国志の各種刊本、つまり、各種木版印刷本は、全て、この決定版である三国志北宋刊本を継承したものである。これにより、当時市井にあった異本は悉く排除されたと言える。

 それ以降、北宋が壊滅した靖康の変で、国土の主要部を残らず金王朝に蹂躙された重大な災厄もあって、継承は完璧と言いきれないものの、多数の関係者の努力の及ぶ限り、完璧に近い信頼性を保っているのである。

 ちなみに、正史現存刊本の多数の実資料を、多年に亘り日、中、台の各地で実地確認した絶大な功績で著名な尾崎康博士は、その過程で、正史、経書などの刊本の書誌学的検討に多大な努力を注いだのであるが、一時、三国志刊本、特に、「紹凞本」の欠点を摘発する使命を与えられ、学問の本道を逸れて道草を食ったようである。

 尾崎康博士の著書を見る限り、上に述べたように、三国志各種刊本に、若干の異同はあっても、本質的なものは少なく、まして、世上で提起されている「倭人伝」の勝手な訂正は、資料の根拠を持たないことが読み取れると感じるのである。

 この点、当ブログ筆者は、精査はしていないが、例えば、景初遣使を景初三年と書いている魏志刊本があれば、とうに世上で騒ぎを起こしているはずであるから、そのような異同のある「異本」は、一切発見できなかったと推定するのである。

 案ずるに、そのような異同は、刊本登場以前に、不正確な通用写本からもたらされたか、或いは、粗雑な抜き書きによって発生したとみるのが、順当な見方であると感じるものである。

 以上の当ブログ筆者の個人的な認識は、尾崎康博士の著作に基づくものであるが、引用、認識の誤りは、当ブログ筆者の責に帰すべきものであることは言うまでもない。

未完

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