毎日新聞 歴史の鍵穴 「伊勢・出雲ライン」の妄想
伊勢・出雲ラインの意味 神話を演じる祭祀空間か
=専門編集委員・佐々木泰造
私の見立て☆☆☆☆☆ 2016/09/21
今回の題材は、歴史の鍵穴の今月分であるが、またもや、地図幻想を蒸し返しているので、指摘を繰り返さねばならないのである。
今日の技術でも、各地の三角点やそれらを利用して作成した地図、或いはGPSと言った技術が無ければ、見通しの利かない地点間を直線で結ぶことは不可能であり、従って、8世紀当時も不可能であったと断じざるを得ない。
このような批判に対して、確たる証拠を持って反論するのが、このような記事の筆者の責任だと思うのである。
2009年の「国立歴史民俗博物館研究報告」第152集掲載という論文を引き合いにしているが、字数多くして一向に要領を得ないので、別ページで原資料の書評を掲示している。
個人的書評 水林 彪 古代天皇制における出雲関連諸儀式と出雲神話
抄録:本稿は,『続日本紀』の記事に散見され,『貞観儀式』や『延喜式』にも見えるところの,出雲国造が天皇に対して賀詞などを奉上する儀式の意義について考察したものである。
(以下略)
結論を言うと、当記事で紹介されている部分、つまり、地図幻想は、水林氏が本来の論説を展開したあとで、自身の「私見」を補強するために同僚の私見の教示を仰ぎ、論証無しの憶測であることを理解せずに取り込んだ部分であり、当記事で、付け足しのように長々と引用されているのが、水林氏か、いわば心血を注いだ本論なので、紹介の軽重・順序が倒錯しているのである。
それにしても、厳しい言い方をすると、伊勢・出雲ライン幻想は、水林氏自身が論説の冒頭で提示した学問上の信念に反して、現代的な思考を、論証無しに古代の考証に持ち込んだ「無効」な議論なので、その点を理解した上で慎重に引用すべきなのである。
言うまでもないが、このようないい加減な「トンデモ科学」を安易に受け売りすると、論説全体の信頼性を害するものなのである。
と言うことで、今回も、ため息をついて、当記事は非科学的なものであり、ダメだと言わざるを得ないのである。特に、今回は、論証の欠けた蛇足の部分が冒頭に引用されているために、論説本体が巻き込まれて批判されるのは、困ったものである。
一素人がちょっと調べて、論証のアナを指摘できるような論説の付け足しを、本来必要もないのになぜ紹介するのか、理解に苦しむのである。
ご自身の「地図幻想」も、受け売りと言って、別人に責任転嫁するつもりなのだろうか。
以上
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