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2016年9月17日 (土)

今日の躓き石 SFは非科学的か 「ゴジラが暗示する」??

                                   2016/09/17

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 ゴジラが暗示する=青野由利

 今日の題材は、毎日新聞大阪13版「分析・解説」面の「土記(誤字訂正)と題されたコラムであり、専門編集委員のおそらく「無鑑査」(無校閲)記事と思われるので、一読者の意見として、展開の中で不合理な点を指摘させていただくことにする。

 ただし、大事(と思われること)を最初に申し上げると、「SF」は、科学的な仮説に基づく科学的な「小説」(フィクション)であるので、現実と連動していない架空のお話であるが、少なくとも、それぞそれのフィクションの展開は、科学的な思考を経ていると言うことである。

 と言うことで、意見を述べさせていただくと、コラム筆者がまくらで紹介されているテレビシリーズ「スタートレック」で(ストーリー展開上大変便利なので)の「小道具」として多用されているのは、ビーム転送であり「テレポーテーション」ではない。この違いは、単なる言葉遣いの問題ではなく、基本的な動作原理を誤解されたようである。

 SF界の伝統的な定義では、「テレポーテーション」は物質の瞬間移動であり、言い換えれば、物質を構成する全原子そのものが遠隔地点に瞬間的に移動することを言う。
 ただし、そのような現象は、いかなる科学を動員しても説明できない「超能力」であり、ファンタジーである「ドラえもん」ならいざ知らず、そのようなインチキ科学は紹介されていないのである。

 少なくとも、第二シリーズの"StraTrek - The Next Generation" (新スタートレック)で、何度か説明されているように、常用する小道具である「ビーム転送」とは、実は、物質の転送ではなく、転送元にある物体の全構成原子の位置情報をスキャンして、その情報を受信機に転送し、そこで、全構成原子を再現するというものである。
 情報は物質そのものではないから、伝送技術の許す限り、高速で伝達でき、「ビーム転送」が未来永劫不可能とは言えないとされていたものである。
 もちろん、最新の量子力学理論に因れば、物質の構成原子の位置をこうした「ビーム転送」に必要な精度で「知る」ことは「不可能」であるから、結局は、これもまた実現不可能な科学と諦めざるを得ないようであるが、現在知りうる限り、最も妥当な未来科学なので、これからも、利用される「技術」だと思うのである。

 そうしてみると、この技術の限定された再現は、3Dスキャナーと3Dプリンターによる3Dコピーなのである。ちなみに、「テレポーテーション」が実現したとの発表は聞き漏らしたので、ニュースソースを紹介いただければ幸いである。
 もし、3Dスキャナーと3Dプリンターが必要な高精細度を達成することができれば、そして、全原子の位置情報というとてつもなく膨大な情報を伝達することができれば、3Dスキャナーで走査し、完全に忠実にデータ転送し、受信側が3Dプリンターで完全に忠実に出力したとき、原本と複製が限りなく同一に近くて、区別できない可能性は、いまだに否定できないと思うものである。(受信が成功したと確認された時点で原本を破壊するのは、ちょっと恐ろしいものであるが、原理上不可避である)

 さて、どちらかというと全く罪のない「誤解」で始まった記事の末尾近くなって、仮想のゴジラ(コラム筆者は新作映画「シン・ゴジラ」を批判しているようだが、ブログ筆者は未見なので、ここは、当記事の内容に対する批判と理解いただきたい)の「放射性物質の半減期が短い」のに不審感を覚えたとの批判であるが、この言い分は、基本的な部分で深刻な誤解を含んでいると思われるので率直に指摘する。

 ここで引き合いに出されている巨大怪物の活動エネルギーは、超のたくさん付く膨大なものであることは明らかである。従来日本上陸した、ゴジラは、何を食って、それまで日々生きていたのか、そして、上陸後の暴力的な活動で巨体を動かしているのか、丁寧に説明されていなかったが、今回は、何とか説明を試みたようである。

 科学的に考えると、それは短時間で保有するエネルギーを放出する、つまり、半減期の極度に短い放射性物質にならざるを得ないと思うのである。つまり、原子炉に近い、ゆっくりした核爆発とも言えるもののようである。ここまで言うと、猛烈な反発が来そうであるが、これは、ブログ筆者が個人的な意見で言い立てているものではないことをご理解いただきたい。

 もし、巨大なエネルギーが長期間にわたって放出されるものがあれば、その物質から放出される総エネルギーは、超がいくつも付く莫大なエネルギーであり、そのような放射性エネルギーは、核分裂の連鎖反応や核融合反応、果ては、反物質の消滅エネルギーのような極端なものでなければ、自然界に、つまり、科学的に存在し得ないのである。科学的に存在しないものを持ち出すのは、SFではなく、ファンタジーである。
 1グラムの放射性物質が、各種の原子崩壊によって放出する総エネルギーは有限である。こうした有限のエネルギーを極端な短時間で放出し尽くすことで、最新映画のゴジラは活動していると考えるのである。

 この点、しっかり理解いただきたいのである。自然法則を信じる限り、半減期が極めて長いものが日々放出するエネルギーは極めて微弱なのである。

 以上の意見は、SFでなく、現代科学で確認できるので、お確かめいただきたい。

 皮肉だが、そうしたゴジラが活動すると、保有するエネルギーを怪物の活動エネルギーとして利用された、つまり、単なる熱エネルギーとして消費された放射性物質は放射性を失うという皮肉な結果を招くように思われる。映画は未見であるので、そこまで踏み込んだ意見が盛り込まれているかどうかは、不明である。

 と言うことで、当コラムの結論部分は、SFの科学的・合理的思考に基づくものではなく、コラム筆者の誤解に基づくファンタジーと感じるのである。当記事の趣旨をご理解の上、誰か専門家の意見を仰いで、ご確認いただければ幸いである。

 毎度のことであるが、以上は、プログ筆者の個人的見解であり、誰かの意見に影響されたものではないし、この意見を世間に広げようと言う「野心」をもって、書かれたものではない。ここに示された意見を第三者に伝えるときは、以上に表明された「意図」を会わせて伝えていただければ幸いである。

以上

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