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2016年12月21日 (水)

毎日新聞 歴史の鍵穴 見えない鍵穴 もやもやした論文紹介の不満

 私の見立て☆☆☆☆☆ ゴミ箱直行             2016/12/21

 酒に弱い人の遺伝子 中国南部から伝来か
  専門編集委員・佐々木泰造

 今回は、当連載記事筆者の宿痾とも思える地図イリュージョン(幻想、妄想、まやかし)が出てこなかったので、ほっとしているのだが、別の問題点である、論旨不明の論文紹介(症候群)は継続しているようである。

 結論を先に言うと、今回の主題は、北里大学医学部 解剖学研究室 太田グループ 小金渕佳江さん(”ら”とあるが、共同発表者の実態は示されていない)の学会発表論文の紹介らしいのだが、何を斬新な意見として紹介しているのか、読み取れないのである。

 それにしても、字数の限られた記事として、延々と、衆知に近い基礎的な解説が続くのはどうしたことか。「縄文人上戸、弥生人下戸」は、既に広く流布していると思う。
 当記事に大きくかざされている図(毎日新聞サイトには掲載されていない)にしても、特に、何か新たな知見を表示しているものでもないようである。

 肝心の論文内容に話が届く前に、(記事筆者はともかく)大抵の読者が耳にしているはずの一般論で紙面の半分が費やされている。当記事に対して、どんな読者層を想定しているのだろうか。
 続いて、太田准教授の2004年発表論文の紹介のようだが、既に専門分野には広く知られているであろう主旨を、またもや、たっぷり字数を費やして、自分の(しろうとくさい)筆で書き募っているのはどういうことだろう。論文の適正な引用でなく、(門外の素人らしい)紹介者の地の文になっているので、どこまでが論旨で、どこが、紹介者の感想か不明なのである。

 因みに、ネット検索すると、さほどの努力なしに、(ローマ字、英語で検索するだけで)
 The evolution and population genetics of the ALDH2 locus: random genetic drift, selection, and low levels of recombination.
 Hiroki Oota, Department of Genetics, Yale University School of Medicine 
 なる共著論文を見ることができる。

 専門的な論文をすらすら読み解くことは門外漢には無理なので、グラフ類を眺めるだけであるが、紹介者は、この論文を読解されたのか、太田准教授から、要約文をもらったのか何れかであろう。一読者としては、ご本人の(責任の下に書かれた)要約を読みたかったものである。

以上

 と言うことで、ここまで延々と続くもったいない記事の最後の最後になって、小金渕さんの論文紹介であるが、これは、原文を見つけられなかったので、ここに書かれていることを解読するしかない。それにしても、どんな場で発表したのであろうか。

 

 ようやく、核心に至って、当記事の最終部分を読むのだが、ここまでの調子と同じで、どこまでが論文の引用で、どこからが紹介者の見解なのかわからないので、不審な点があっても、追究のしようがない。いや、全文原論文の引用と言われると、貴重な実測データはさておき、そこから想起した想定、推定を学会発表したのかと言いたくなる。

 

 ご承知のように、何気ない学術論文であっても、こうした分析は、現代の政治情勢に投影されて他国の干渉を招きかねないと、愛国論者の批判を浴びかねないのである。実名を晒されて、記事は、他人の拙い紹介では、たまらないと思うのである。

 

 ところで、全国紙の「専門編集委員」たる記事紹介者は、わざわざ、衆知の学説を紹介したからには、これまでの連載記事で展開してきた自説の観点を裏付けするために、今回の記事を書かれたのであろうか。

 因みに、当連載記事の2016年3月23日掲載記事では、「ジャポニカは、7000〜8000年前に中国・長江の中下流域で栽培が始まった。」との主張の下、解説地図では、酷寒の現ロシア沿海州北部を、概して温暖な日本列島と同一視して、同一の稲作文化圏である、とのご託宣を示しているのである。
 イネ・コメの比較言語学 稲作民の大量移住に疑問符

 自身の主張があるのであれば、このようにあめ玉を精一杯に頬張っているような気だるいいい方でなく、フェアに、明快に決めて欲しかったものである。

 「琉球諸島にも多いADH1Bの派生型は縄文時代から日本列島にあったとみられ、縄文時代人の先祖とともに日本列島に伝わった可能性が大きい。」と言い切っている
が、素人にもわかるように、「日本列島の縄文人は、琉球列島の住民を先祖としている。」と言うべきである。(誰の主張か、はっきりしないのだが)

 

 ついでに言うと、文章の「お作法」として、冒頭に近い場所で「下戸」と端的に言っておきながら、以下、「酒を飲んですぐに顔が赤くなる人」、「酒に弱い人」と言い方が端的さを失いばらつくのは、文筆を業とする人にしては不用意である。(「コピペ」疑惑が沸いてくるのである)

 また、論理的な文章を本分とするなら、「酒を飲んで、顔が赤くなったり、頭が痛くなったり、吐き気がしたりするのは、アセトアルデヒドの毒性による。」と、一度丁寧に書いておいて、間を置いて、言い方を崩して「酒を飲んですぐに顔が赤くなる人」と言い方を変えるのも感心しない。
 いや、字数カウントで評価されるジャンク記事なら、そんなことはどうでも良いのだが。

 

 専門編集委員殿は、無鑑査・無校閲掲載される記事を、納得いくまで通読、推敲などしないのであろうか。

 
批判ついでに、初心者向けのお説教をしてしまうのは、当ブログ筆者の老人性多弁症の現れである。

 

以上

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