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2017年1月 2日 (月)

今日の躓き石 サッカーの「フィジカル」 NHKの混乱

                         2017/01/01
 今回の題材は、NHKBSの新年特集のサッカー番組である。日本代表監督のインタビューを中心に、各試合のハイライトや選手の談話がたっぷり聞けたのだが、一つには、サッカー関係の新聞記事や報道でよく聞く「フィジカル」なるカタカナ語の意味が明快に聞けると思ったからである。

 まず、肝心なのは、現監督は、いつもフランス語で話しているので、普通、英語由来の形容詞-名詞化した言葉は、まずは口にしないということである。
 口にするとしたら、日本のメディアの影響を受けて、言葉が崩れたと言うことなのだが、実際に何と言っているが、通訳された言葉が被さっているのでよくわからない。まじめな話として、吹き替えするのでなく、字幕にすべきではないか。フランス語を解する人は限られるかも知れないが、生の言葉を聞きたいものである。

 ちなみに、いきなり「フィジカル」と聞こえたが、これは、「フィジカルコンディション」と言っていたのであって、日本語では、普通は、単に、コンディション、なり、体調というものである。身長、体重の話ではないのである。言葉を足すことで、意味がぼける誤訳の好例である。また、海外組のレギュラー落ちについて、泣き言を言っているわけではないのであった。

 ただし、監督は、オーストラリアチームの評価として、パワフルで体格が大きいとちゃんとした言葉で喋っているのである。それに対して、直前のNHKのナレーションは、「フィジカル」と言いながら示すのは身長のデータである
 つまり、この部分のナレーションを書いた誰かにとって、「フィジカル」は、即ち、身長、体重と言った体格である、と解されるているようである。この評価要素に差があると言っても、身長は伸ばしようがないから、言うならば試合する前から、負けていることになる。

 後ほどの再戦の時、監督は、ゴール前の空中戦では、背の高い方が随分有利だし、それは、変えようがないので、ゴール前に入らせない、と言う明確な戦略を指示していて、当然とは言え、大変有効だったということである。

 やがて、若きストライカーの話になって、恒例の「欧州トップリーグの壁」が描かれたが、この部分のナレーションでは、またもや「フィジカル」と言い立てているが、実際に戦った当の選手は、「身体も強いし、一瞬のスピードが速い」と的確に事態を把握していて「フィジカル」などとわけのわからない言葉を言い立ててはいない
 それにしても、ここでナレーションで言う「フィジカル」は、選手のインタビューを聞いた上で、課題は身長、体重の問題だけでないと理解した上でつけた筈だが、先ほどと同じ言葉の意味を大きく変えていて、それでいて平然としているNHKのスポーツ番組の校閲は、この程度なのかと、がっかりするのである。

 監督は、体力面の評価として、スプリント能力が重要な要素であり、これは鍛えようがあるし、鍛えられる。そうした特質を生かすのが、日本サッカーの理想的な姿になるというまことに具体的で、効果が理解でき、まことにもっともである。

 また、この際、フランス語で話し合えるメンバーを代表チームに採り入れて、この面でも選手との意思の疎通を改善しているようだが、と言うことは、チーム付きの通訳に問題があるのだろうか。個人攻撃になりそうで怖いのだが、これまで監督談話として報道されている内容が、カタカナ語連発で、いかにも、言葉選びが不用意と感じさせたのは、その辺りに原因があるのかも知れない。このような短所は、身長が足りないのと違って、鍛えようがあるので、是非ご自愛いただきたいものである。

 総括として、やはり、 報道陣も、「フィジカル」なる得体の知れないカタカナ言葉に逃げ込まずに、要点を言うべきだと思うのである。
 サッカー報道において、「フィジカル」、「メンタル」共に禁句扱いにして、一般人に理解できる日本語で報道して欲しい
と思うのである。より密接な意思の疎通が必要なのは、代表チームの話だけではないのである。

 今回は画面に見えていたが、監督、選手が、現場で切実に感じたことが具体的に語られているのに、報道陣が小賢しくせき止めて、意味不明のカタカナ語でまとめてお茶を濁すのは、一般人にとっては、情報遮断であり、報道の姿勢として感心しないのである。

以上

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