私の本棚 「古代史15の新説」別冊宝島その3 3/6 長野正孝
私の見立て☆☆☆☆☆ 2017/02/23
鉄が解いた古代史の謎- 消されていた古代倭国 長野正孝
*鉄材商人幻想
國出鐵,韓、濊、倭皆從取之。諸巿買皆用鐵,如中國用錢,又以供給二郡。
再掲、再説すると、論者は倭が鉄を買い付けたというが、記事には、鉄は通貨代わりだと書いているのである。つまり、価値のある財貨を現地に持ち込んで売りつけ、対価として鉄を支払って貰うという交易である。鉄を買うのではない。自説に合うように史書記事を改竄するのは、不信感をあおるだけである。
まして、鉄材を当時存在しない「日本」に運んだという記事は、何かの錯覚であろう。「日本」が登場したのは、さらに四,五百年を経た後である。重大な時代錯誤というしかない。どこの何者に運んだと主張しているのか。
普通に考えれば、「倭」が鉄を入手したら倭の本拠地に持ち帰るのである。
それがどの地域にあったかは、この際の議論には直接関係ないが、まずは、朝鮮半島南部の拠点に届けたろうし、ものの10日ほどで届けられる九州北部に持ち帰ったのだろう。長々と続く沿岸航海なのか、それとも山河を越えてか、とにかく6か月を要しかねない遠隔地である後年の大和の地まで直接、全量を運んだとは思えない。
それが、物の道理というものである。
*古代交易の推定
当ブログ記事の筆者の時代感では、当時の倭は、各地に点在する「国」が、それぞれ小国をなして自律的に活動しているのである。
ものの道理として、価値あるものは、多くあるところから少ないところに、水が低きに流れるように移動していくものである。バケツリレーのようで月日がかかるが、当時は、「通商国家」はないし「国境なき豪商」もいないのである。
後年の山城あたりで出土した鉄遺物は、土地の豪族が原産地から直接買い付けたのでなく、九州北部から瀬戸内海沿岸諸国を順次通じて到着したと見るものではないか。
鉄が「国際通貨」であれば、交易対価として鉄を受け取るのであり、財貨物ではないから、途中の諸国で鉄に都度関税を上乗せされることがない。数十年に亘って、そのような交易を続ければ、自然に「金庫」に鉄が溜まる。使い道が特になかったから死蔵され、豪族の埋葬に際して、副葬物となったのではないか。
武器などに活用されていたら、とても、死蔵も埋蔵もしないのである。
未完
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