私の本棚 「古代史15の新説」別冊宝島その3 4/6 長野正孝
私の見立て☆☆☆☆☆ 2017/02/23
鉄が解いた古代史の謎- 消されていた古代倭国 長野正孝
*謎の鉄器文明
論者は、「運んだ鉄は戦いの後で発生した武器などの鉄くず」と称しているが見てきたようなほらであろう。そんな詳しいことは書かれていない。文意が取れない悪文である。
そのようにして得た「鉄くず」を、何者かが九州北部で鋼鉄製品に鍛冶したと言うが根拠はあるのだろうか。ページ上半分になにやら真っ黒い図が貼り付けてあるが、どこでどのように発掘されどのように確認された物なのか書いていないから、場所を占めているだけで無意味である。
続いて、「一つの大きな鉄器を三つに加工」とあるが、なんのことか理解できない。
どの程度を大きいというのかわからないが、それぞれの鉄器には、その鉄器に託された機能があったはずであり、たとえば、一つの「鉄斧」を三つの「鉄斧」に増やす加工ができるとは思えない。あるいは、細かく「裁断」と言うが、鉄器を、まるでカッターナイフで紙を切るように、裁断できる刃物があったとは思えない。
加工して「付加価値」をつけるというが、当時、「付加価値」と言う概念はなかったから、時代錯誤と言うしかない。まして、「さらに商い」と言うが、当時どのような商業活動をしたのか示されていないので、意味不明である。
要は、現代の経済活動の用語を、それが、古代の鉄本位経済に通用するかどうかお構いなしに、適当に書き殴っているのだが、それは、時代錯誤に過ぎず、意味を理解できない善良な読者は混乱する。
*時代錯誤の国際人説法
とどめとして、次の小見出しには失笑する。「国境なき国際人」は、どんなつもりで書いたのだろうか。当時の東夷では、国家が形成されていなかった。東夷伝の便宜上、大国、小国取り混ぜて「国」と称しているのである。
もちろん、現代感覚で言う「国境」は存在しないのである。国家がないから、「国籍」も「国際」もない。論者が、自家製の現代概念にとりつかれて、時代錯誤に陥っているのが見える。
最後のご奉仕で、もう少し批判を足す。
未完
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