私の本棚 「古代史15の新説」別冊宝島その3 2/6 長野正孝
私の見立て☆☆☆☆☆ 2017/02/23
鉄が解いた古代史の謎- 消されていた古代倭国 長野正孝
*朝鮮半島鉄事情
朝鮮半島の鉄産出を書いているのは、東南部の「辰韓」のあたりの部分である。例によって、三国志の記事は、簡にして要を得ているから、丁寧に読みほぐせば、たっぷり情報が取れるはずである。
常識的に言えば、大々的な鉱山採掘ではなく、露頭に近い状態で鉄鉱石がとれたのであろう。それを、薪炭を使用して精錬し、銑鉄を取り出したと言うことだろう。あるいは、後年の中国山地の砂鉄採取、たたら製鉄の前身、つまり、砂鉄採取だったかも知れないが、当ブログ筆者の知識外である。
國出鐵,韓、濊、倭皆從取之。諸巿買皆用鐵,如中國用錢,又以供給二郡。
ここには、韓、濊、倭が鉄を手に入れていると書かれているが、争ったとの記事はない。争っていたとすれば、それぞれの集団が派兵して鉱山支配を競うのだろうが、各集団には、大国、つまり、韓国、濊国、倭国というような広域国家が未形成で、小国、つまり、韓伝で列記されているに国家の体をなしていなかったから、「国軍」、「国益」なとの概念はなく、また、そこまでして産鉄地の独占支配を計るほどの価値を見いだしていなかったとみられるから、争ってはいなかったのだろう。
また、産鉄地は楽浪、帯方両郡の監督下にあったと思われる時代なのに両郡が鉄鉱山を管理していた気配はない。単に、両郡に鉄材が供給していただけである。銭代わりに貢納したのではないか。つまり、両郡も、鉄を特に重大視していなかったのである。
こうして、原文を咀嚼してみると、論者の書いた記事は、資料を理解したものではなく、いくつかの単語を取り出して自身の架空世界を構築し、それについて語っているようだ。現実と仮想世界の区別がつかないうのは感心しない。論者の見ている仮想世界は、論者にしか見えないので、読者には、語られることはが何を指しているのか見えないのである。
未完
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