私の本棚 古墳の古代史 東アジアのなかの日本 1/4
森下 章司 ちくま新書 1207
私の見立て★☆☆☆☆ 2017/03/01
その道の研究に長年従事している諸兄の著作には、尊敬を払っているのだが、折角の著書に、たとえば、用語選択の粗忽さのような不具合が目立ち率直に指摘せざるを得ないのである。
特に顕著なのは、カタカナ語の不用意な使い方である。古代史に関する著作は、カタカナ語なしで論述できるはずが、数ページに一度で登場するカタカナ語に、その都度疑問を感じるのである。
本新書の場合、大事な自己紹介が、いきなり大脱線している。この際、丁寧にほじくることにさせていただく。
*カバー裏の謳い文句
『紀元前一〜四世紀の中国・朝鮮・日本。この時代の東アジアでは、中国の影響を受け、朝鮮・倭など周辺地域において、大小の「渦巻」が発生するごとく社会が階層化し、やがて「王」と呼ばれる支配者が登場する。その状況を最も雄弁に語る考古資料が「墳墓」だ。領域の明確な境界も形成されていなかった時代、ひととものが往来し、漢文化が大量に流入する一方で、東アジア諸地域の「ちがい」はむしろ拡大の方向へと向かった。明白に存在するそのちがいとは?それは何から生まれたのか?最新考古学の成果に基づき、古代アジアのグローバリゼーションとローカリゼーションに迫る。』
「紀元前一〜四世紀の中国・朝鮮・日本」の切り出しを「この時代の東アジア」で受けているようだが、この東アジアに中国は含まれていないようだから、文章の流れに蹉跌が生じていて感じが悪い。
「周辺地域」というが、不意打ちなので意味が通じない。「渦巻」が、説明のない比喩で、一段と意味が通じない。著者が自己流に言い回しを工夫しても、「紀元前一〜四世紀の中国・朝鮮・日本」の不安定な語感と合わせて、言葉の意味が読者に伝わらなければ、単なる寝言である。
未完
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