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2017年6月 8日 (木)

今日の躓き石 将棋界のレジェンドに仰天

                             2017/06/08
 今回の題材は、宅配講読している毎日新聞大阪第13版の社会面記事である。

 記事の題材は文化面ネタだが、目下、快進撃を続けて世間の注目を集めている新米棋士の偉業の引き立て役で、棋界最高峰棋士が「レジェンド」なる、訳のわからないカタカナ語の帽子をかぶせられているのに困惑したのである。

 囲み記事は、でかでかと「レジェンド脱帽」と見出しをつけているが、実際は、大人のコメントにとどまっている。
 公式対局で負けた訳ではないのだから、プロ棋士として「脱帽」するはずがないのである。何とも、もったいない誤報である。
 タイトル戦、番勝負で勝ったときまで取って置いて欲しいものである。

 最近、スポーツ界起点で世間を汚染しているカタカナ言葉に「レジェンド」があって、よく定義が浸透しないうちに、誤解、悪用で拡散しているのに気づいていたが、今回は、日本の伝統文化の担い手であり、俗化を免れていると思った将棋界の事件なので、ここにコメントを残さないと行けないと思ったのである。

 レジェンドのことの起こりは、おそらく、スキージャンプで、とうに盛りを過ぎ、引退しているとばかり思った選手が、若手に互して上位に食い込んだところから、「生ける伝説」と言う意味で、「生きたレジェンド」と呼んだはずなのである。
 スポーツ界は、活動期間が短く、新鋭選手が子供時代に憧れた選手は、大抵、引退していて、ともに技を競うことは、滅多にできないものである。

 ところが、その辺りの趣旨がわからない国内メディアが、現役の古参選手が、いろいろな通過点記録を達成した時に「まだ現役」という意味に使っているのである。すでに、元々の意味を外しているのだが、まだ、可愛い方である。

 さて、今回やり玉に挙げられたのは、現在棋界の最上位に位置している三冠王と全盛期を過ぎたとは言え、内心、タイトル獲得を目指している棋士の二人であり、ともに永世名人の資格を持っていても、名乗るには早すぎて、まだまだ、現役バリバリで今後何十年と指し続ける可能性があり、とても、ここで譏られているような「過去の遺物」などではないのである。

 趣旨として繰り返しになるが、勝ち続ける新人を褒める言葉が種切れになったとしても、棋界の看板棋士達に対して「レジェンド」などは、お門違いなのである。

 毎日新聞は、是非、カタカナ言葉の悪用撲滅などとは言わないが、言葉の意味のブレにもっと慎重であって欲しいのである。

 配達される全紙面は、(広告は除き)、報道という意味で、同じ重さを持っているのだから、文化面、将棋欄だから言葉の扱いが軽く、社会面だから言葉の扱いが厳しいと言うことはないはずである。

 いや、新語をどう使いこなすかは、いわば、担当記者の腕の見せ所であり、自分なりに苦心した結果だから、たかが一介の素人の個人的な意見など、関係ないというかも知れないか、ことは、毎日新聞の品格に拘わることなので、ちょっと再考して欲しいものである。

以上

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