私の本棚 季刊「邪馬台国」 131号 私の古代史論 6/6
塩田泰弘 魏志が辿った邪馬台国への径と国々
私の見立て★★★★☆ 2017/12/18
*通じない指示
倭国内には、中国の刺史のごとく、言葉が通じ、文字があり、読み書き計算できる巡回指導者を派遣し、情報収集、報告と経営指導に当てたが、文書行政ではないので、伝令で数字を要求しても、数字の概念の欠けている相手には、伝わらないのである。
*提出資料の不足
実際、魏使に求められたのは、帯方郡から女王国への道里
と所要日数、そして、戸口であるが、戸籍未整備だから、戸数は不正確、口数は欠けている。
本来、道里
上にない諸国への里数、所要日数は要らないはずである。
*部分総和と総計の不一致
おおざっぱ極まりない数値の足し算では、桁の少ない、小さい数は、少々足しこんでも総計に現れない。人によっては、部分総和と総計の不一致を重欠点視するから、時に、些細な部分数値を消して照合できなくするのである。(伊都国・女王国道里など)
*榎一雄氏所説の復興に期待
と言うことで、懸案とした榎一雄氏の放射道里説と魏使王都不達説であるが、本論著者ほどの見識の人が、紹介・短評を漏らすのはもったいない。
*また一つの異説
女王国戸数七万餘戸も、著者ほどの見識の人にしては、軽率な予断に過ぎると思うが、ここでは論じない。
それぞれ些細なようだが、それぞれの選択肢を採用すれば、ここに例示されている諸氏の議論が根拠を失うので、公正の見地から言及を避けるべきではないと思うのである。(古田武彦氏の韓国内陸行提言は言及されている)
*最後に
とかく、感情的な保身・排他の強弁が横行する世界で、本論著者は、冷静な視点を保っているようなので、今一息の考え直しを期待するものである。
完
« 私の本棚 季刊「邪馬台国」 131号 私の古代史論 5/6 | トップページ | 「今どきの歴史」 第四回を巡って 上野三碑の紹介に拍手 »
「歴史人物談義」カテゴリの記事
- 新・私の本棚 古代史検証4 飛鳥の覇者 推古朝と斉明朝の時代 追記 2/2(2022.04.11)
- 新・私の本棚 古代史検証4 飛鳥の覇者 推古朝と斉明朝の時代 追記 1/2(2022.04.11)
- 私の意見 歴博展示品「後漢書東夷伝復元複製」の怪(2022.03.05)
- 私の意見 御覧「所引」出典の考察 東夷伝探し 補充(2022.05.08)
- 新・私の本棚 小畑 三秋 『前方後円墳は卑弥呼の都「纒向」で誕生した』(2022.01.21)
「私の本棚」カテゴリの記事
- 「古田史学」追想 遮りがたい水脈 1 「臺」について 増補再掲 3/3(2022.01.15)
- 「古田史学」追想 遮りがたい水脈 1 「臺」について 増補再掲 2/3(2022.01.15)
- 私の本棚 3 岡本 健一 「邪馬台国論争」 改頁版 8/8(2021.12.23)
- 私の本棚 3 岡本 健一 「邪馬台国論争」 改頁版 7/8(2021.12.23)
- 私の本棚 3 岡本 健一 「邪馬台国論争」 改頁版 6/8(2021.12.23)
「倭人伝の散歩道稿」カテゴリの記事
- 「古田史学」追想 遮りがたい水脈 1 「臺」について 増補再掲 3/3(2022.01.15)
- 「古田史学」追想 遮りがたい水脈 1 「臺」について 増補再掲 2/3(2022.01.15)
- 私の意見 英雄たちの選択 ニッポン 古代人のこころと文明に迫る 1/17(2018.02.03)
- 魏志天問 1 東治之山~見落とされた史蹟の由来 再掲 4/4(2021.03.14)
- 魏志天問 1 東治之山~見落とされた史蹟の由来 再掲 3/4(2021.03.14)
「季刊 邪馬台国」カテゴリの記事
- 新・私の本棚 季刊「邪馬台国」第141号 巻頭言「隔てる海、つなげる海」(2022.03.24)
- 新・私の本棚 第395回 邪馬台国の会 講演 安本 美典 「謎の4世紀第11代垂仁天皇時代のできごと」(2022.03.04)
- 新・私の本棚 西村 敏昭 季刊「邪馬台国」第141号 「私の邪馬台国論」(2022.01.04)
- 新・私の本棚 岡 將男 季刊邪馬台国 第140号 吉備・瀬戸内の古代文明(2021.07.13)
- 新・私の本棚 小澤 毅 季刊「邪馬台国」第139号 『魏志』が語る邪馬台国の位置 改 2/2(2021.12.24)
« 私の本棚 季刊「邪馬台国」 131号 私の古代史論 5/6 | トップページ | 「今どきの歴史」 第四回を巡って 上野三碑の紹介に拍手 »
コメント