私の本棚 史話 日本の古代 二 その3 気候変動からみた「邪馬臺国」
謎に包まれた邪馬台国 直木孝次郎編
気候変動からみた「邪馬臺国」 山本武夫
私の見立て★★★☆☆ 妥当堅実な古代史解釈 2017/12/26
*卓見と時代錯誤
(三国史記新羅本紀)一九三年の条には、「倭人大飢来求レ食千余人」とある。この倭人は、おそらく朝鮮半島にコロニーをつくって在住していた倭種の人々を言うのであろう。倭国から飢餓の人々が千人程度も対馬海峡を渡って、確実な援助の当てもない隣国を訪ねるということは到底考えられないことだからである。[以下略]
倭人が陸続きの半島南部から来たという推定は客観的に妥当なものてある。ただし、古代史で場違いな「コロニー」は時代錯誤の極みで、無用である。単に居住していたで良いのではないのか。古代史について素養がないのを暴露していて、痛々しいのである。
以下、ついていくのが辛くなったので締めとする。
*卓見と時代錯誤
「三国志」の編者である陳寿は当代一流の学者である。その一流の学者がこれらの相当豊富な資料に基いて編んだのが「魏志東夷伝の倭人の条」なのである。例えば「邪馬壹国」と「邪馬臺国」の如く、伝写の間に生じた謬りならいざ知らず、内容上のことを疑うのは余程の根拠があってのことでなけれぱならない。
史料批判、つまり、史料の信頼性評価に始まる閲読において、肝心な大筋を見通しているのは尊敬に値するのだが、そのような見識の持ち主が、「「邪馬壹国」と「邪馬臺国」の如く、伝写の間に生じた謬りならいざ知らず」と安直な受け売りをするのは、もったいない話である。
深読み過多から来る曲解は、その人の持ち味だが、安直な態度は、感心しない。
以上のように、時代事情の中で、気象に関する事項は、データを元に堅実に考察されているのだが、文献引用と解釈では、迷走、勘違いの連発で、ずいぶん損していると思うのである。それにしても、どこかで文筆の基礎について良い助言者を得ていれば、ここまで恥の上塗りはしなかったと思うのである。
ここだけではないが、善意の読者なのに、低次元の書き損ないを読まされてはたまらないのである。
史学界では寄稿論文の閲読校正はしないのだろうか。
完
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