倭人伝の散歩道 番外 稲部遺跡調査報告の怪 5/5
2016/10/18 2018/01/09
さて、以下、壮大な粉飾の連発と思われるのです。
まずは、「保持することが勢力に大きな影響を与えた鉄器」と物々しく語っていますが、鉄器を「保持する」ことが威力を持つと、他国統治者は、見たことも聞いたことも無いもののに恐れ入るのでしょうか。
そうなら、当時、他に類のない鉄器を持っていた当遺跡統治者は天下を制するはずですが、そのような記録はあるのでしょうか。理屈に合わない話です。
引き続いて、更に物々しく「祭祀都市・政治都市であるうえ、工業都市でもあった稲部遺跡」と主張されていますが、それでは、当遺跡統治者の権力が中国を凌ほどに輝くのです。遙か後年の織田信長の安土城に於ける天下布武の威勢を投影しているのでしょうか。時代錯誤の幻影と言えますが、祭祀都市、政治都市、工業都市の十二文字が、全くの虚辞なので、意味がわからないのです。
「都市」と銘打つのは、一次産業従事者の比率が低く、二次三次産業の従事者や官僚、祭祀従事者が多数居住し、門前市をなす状況を主張していることになります。
それほど大々的な都市は、後世の平城京、平安京でわかるように、食糧自給が不可能で、周辺からの定常的な大量の食糧供給が不可欠となります。
そうした地域社会構造の根拠はあるのでしょうか。
遺跡、遺物に文字記録が付属していたわけでもないのに、現代の論者が、勝手に現代的な都市国家を見るのは、かなり、念の入った幻像投影でしょうが、このイリュージョンでは、だれも騙されてくれないでしょう。
以上、学術的な成果発表に、時代錯誤の無謀な文飾を施すのは、地方自治体が公費で行った事業の科学的な成果発表にふさわしくないと考えます。
ふと気づくと、サイト内の別の告知記事には、次のように粛々と書かれています。
「稲部遺跡発掘調査現地説明会
〈内容〉発掘調査で縄文時代から古墳時代までの遺構と遺物が検出され、同遺跡は弥生時代後期後半から古墳時代の前期を中心とする愛知川流域の拠点集落であることが明らかになりました。検出された遺構などを見学しながら、職員がわかりやすく説明します。」
ここが「成果発表」の原典であり、これに対して大層な粉飾を行って、虚構の世界を提示しているのが、それ以降の発表文のように思います。
是非、彦根市教育委員会は、地方公共団体の教育を預かる公共機関にふさわしい、学術的見解を堅実に書き連ねるように改定してほしいものです。
以上
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