サイト記事 「魏志改竄説」批判 3/3
2018/05/29
*個別確認4
4の主張は、3.までの推定が根拠を確立できていないため、根拠のない暴論となっています。
丁寧に言うと、かりに、推定されている事態か起こって、敦煌残簡以後に(呉国志)特定部の改竄があったと証明する証拠が得られたしても、それは、国志の別の部分に改竄が行われたという確たる根拠にはならないのです。
この部分の結論として、国志に「改竄」が行われたという確実な証拠は、全く存在しないと断定されます。
*誤解列記
写本、刊本時の皇帝僻諱を改竄の事例としていますが、改竄の定義をご存じないようです。僻諱は、特定文字の置き換えなどで皇帝実名などを避けるものであり、改竄して文意を変える意図でなく、刊本ならぬ私的写本で僻諱が適用されたかどうかも、全巻確認しない限り不明です。
また、裴注を改竄の事例としていますが、これも、改竄の定義を外れた暴言です。紹興本、紹凞本などの刊本現存品を見ても、裴注は原文と区別され、原文を書き替えることはありません。
*用語混乱
「改竄」、「善意」、「悪意」などの法律用語を、日常感覚で書き連ねるのは、まことに不用意であると考えます。
*類推の主張
視点を反転して、国志に一切改竄が無かったと断定する絶対的な証拠は無いから改竄の可能性を認めるべきだと力説されているようですが、それは考え違いです。
漠然たる一般論であれば、根拠不確かな推定を押し出さなくても、単なる思いつきの主張として、存在を赦されるものです。
ところが、主張されているのは、特定の部分で特定の内容の改竄があるとの具体的主張であり、それは、確証を持って正しく主張しなければ、単なる暴言だということです。
1-4のような不確かな推定の積み重ねを確証とみているということは、学術的な論証に対する判断能力が欠けているということであり、著者の評価が低下するものです。
*助言
と言うことで、このような論法は、大変損ですよ、と忠告するものです。
所説を主張したいのであれば、正攻法で論証すべきです。世に、曲芸的と揶揄される主張はごまんとありますが、論理の曲芸は、褒め言葉ではなくて、欺瞞の類いとして、排斥されているのです。
おそらく、著者は、嫌われても良いからと苦言を呈してくれる友人をもっていないと思うので、ここに、とびきりの苦言を書き記したのです。
完
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