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2018年6月30日 (土)

私の本棚 季刊「邪馬台国」 134号 石野博信 「大和・纏向遺跡と箸中山古墳」 1/5

               2018/06/30 2019/01/29
 私の見立て ★★★★☆

*お断り
 最初にお断りしておくが、当ブログ筆者は、石野博信氏が、古代史学分野の考古学世界で大変信望の篤い先賢であり、しかるべき敬意を払うべきだという事は承知している。
 しかし、本記事は、氏の論考の中の不都合な部分を、なぜ不都合かと指摘しているのであって、氏の権威を否定するものではないし、氏の論考を全面的に否定するものではない。遠慮ない率直な指摘が、最大の敬意の表現と信じて、ここに書き立てているものである。

*座興-即興のお断り
 重ねてのお断りなのだが、以下の論評は、石野氏の当論説をもとにその場で思いついたものであって、深く調べたり、考えたりしたものではない。単なる個人的な感想なので、そのつもりで批判いただきたい。

*人と物の移動
 「はじめに」と題して、枕であるが、考古学界に広く定着していると思われる早計な判断が述べられている。それは、遺跡から出土する土器からその産地を判断するとき、その産地の者がその地に来訪、居住していた証拠だと速断していることにある。

 確かに、その土地固有の生活習慣、食習慣があっただろうから、特定の土器は特定の地域の住民しか使わなかったという事もあるだろうが、ここに示されているような汎用性の高い土器類は、産地から各地に「販売」されていた可能性が高いのではないかと思われるのである。

*物の一人歩き
 古代の商業の形態に関しては、既に学界の定説があるかも知れないが、産地から消費地まで、産地の者が持参する以外に、産地から、隣接地域へ更に隣接地域に「商いの連鎖」で届いた可能性があると思う。

 つまり、別に、今日言う近畿圏の者が、都度遠隔地まで手運び移住しなくても、近畿系土器は、日常のあきないの営みで、各地に到来していた可能性が高いと見るのである。
 特に土器は割れ物であるから、扱いに馴れた者が適切に緩衝材で保護した物が、いわば、輸送に適した商品として無事に伝来していたように思う。

*担ぎ商売幻想
 更に言うと、薄型土器のように嵩高い割れ物は、「質量」(重さ)は、さほどでなくても、背負子で担う陸上輸送に適さず、手漕ぎ舟で、海上輸送されていたのではないかと見るのである。
 一人漕ぎ程度の小舟商いの商人が、潮待ち、風待ちしながら、泊りの市で稼いでは、また次の泊りへと、港伝いに渡り歩く行商をしていたのかも知れない。少なくとも、そのような小規模な船商いがなかったとは言い切れないはずである。
 まさか、高価な土器の商いだけで、長い商い旅を食って行けたとは思えないので、非常食もかねて、干し魚とか干し貝とか木の実とか、腹の足しになるものも携えていたかも知れない。何しろ、土器の中は空洞である。見事に混載できるのである。

 と言うように、古代の商いで、薄型土器は、食料品と共に、小舟で港から港にゆるゆると運ばれたように思う。
 それとも、各移住者は、台所道具一式と保存食をしこたま背負って、何百㌖の旅路を延々と歩きつめて引っ越ししたというのだろうか。

 と言うことで、冒頭で、とても信じがたい社会像を提示いただいて、理解の試みは、一旦頓挫するのである。

                          未完

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