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2018年6月29日 (金)

私の本棚 季刊「邪馬台国」 134号 物部氏と尾張氏の系譜(5) 4/4

*全国制覇

 筆者は、「これらの人々にまつわる皇族の逸話は(中略)上代の文献に記されて、所縁の神社・古墳・伝承などは、日本全国におよぶ」とおっしゃるが、随分誇張していると思う。例えば、古墳、いわゆる大規模墳墓が日本全国至る所にあるとは聞いたことがない。

 ちなみに、上田正昭氏は、後世日本とされた領域という意味で、地理概念としての「日本列島」と呼ぶことを提唱している。これに対して、「日本全国」のように、「全」、「国」と言い立てるのは、政治的な概念であるから、相当胡散臭いのである。

*軽佻浮薄の弊害
 また、現代の若者に神社(寺院朱印も多数あると思うが)の御朱印やパワースポットのブームの波(ブームの波?)が押し寄せていると言うが、それを、生物の遺伝情報であり、親子関係によってのみ継承されるDNAのせいにするのは、どんなものか。

 また、殊更非仏教系だけ(?)のパワースポットに対する一般人(?)の関心が高まっていると感じているのは、まことに、非科学的、非民俗学的な書きぶりである。
 まっとうな史学者の書いた論考とは思えない。

 このように、世相に感じいって、「存在感」や「真実味」がまして感じられるというのは、感情的なものであって、非科学的である。加えて、論考を書き上げる際に、現代的なカタカナ語の言い崩しや、若者言葉を排すべきである。

 先に挙げたような言い崩しは、狭い意味での世間受け、つまり、筆者の取り巻きの若者受けするかも知れないが、その分だけ、古代人の心から遠ざかっているのである。筆者が若者に迎合して筆を曲げた論考は、若者の心に古代人と通じ合わない小宇宙を形成して、若者が古代史学に通じようとする気概を損なうのである。

 ちなみに、編集後記では、「DNA」が犯罪捜査の「DNA鑑定」の意味になっている。若者言葉は、なんでも、三文字、四文字に端折って意味不明にする、一種の幼児語なのである。染まらないでいただきたいものである。

*揺れる言葉
 最終段落で、「フィールドワーク」と書いているのは、文化人類学的な野帳作成を言うのだろうから、特に、不適切なことはないが、先ほど「上代の文献」と言って、ここで「上代の古典」とは、意味不明である。

 古代史に関する論考は、少なくとも、意味の固まっていない現代語を排しなければ、読者に意味が通じないから、これらの場違いな言葉は、無意味である。

*本領滔々
 以下、2.3.は、物部、蘇我両氏の衰亡譚を離れ、構想も新たに、倭人伝時代にちなんだ古代の様相について、豊富なフィールドノートをもとに多彩な考察を加えてゆったりと展開している。とても、素人の口出すことではないので、関心のある各位は、是非、当誌を購入して熟読いただきたいものである。

*総評
 前段部分の批判ばかりになったが、記事筆者ほどの学識と思考力の豊富なかたが、若者の感情に訴求する書き方に陥って、古典的な文章作法、語法をなおざりにしているのは、傷ましいと感じたのである。
                      完

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