私の本棚 季刊「邪馬台国」 134号 石野博信 「大和・纏向遺跡と箸中山古墳」 4/5
2018/06/30
*暴走するモンロー主義
ちなみに、場違いな引き合いに出されている「モンロー主義」の解説は、こうした余談の事故例に似て、素人の聞きかじりで不正確なものになっている。まことに残念である。
もちろん、いろいろ解釈はあるだろうが、できるだけ中立的に解釈すると、事の核心は、米国(the United States of America)が、主として、イングランド(清教徒)系が発端とされていても、フランス系、ドイツ系、オランダ系、スペイン系、イタリア系など、欧州各地出身者が混在している事に起因している。国の基本は、プロテスタント(新教)を奉じるが、ラテン系のカソリック教徒もいたし、ユダヤ教徒であるユダヤ人もいた。人種と宗教の坩堝という評価もある。
そして、そのような内情は、「合衆国」なる諸国連合を構成している「州」(sate)、つまり、「国」、によって大いに異なるため、欧州各国間の紛争に介入、つまり、派兵、ないしは、軍事援助するには、連邦政府として、各国(州)の合意を必要とし、内戦再発に繋がる不和を招きかねないので、合衆国連邦政府は、欧州での国家間紛争に一切干渉しないと門前払いしたのである。
これは、出身国から合衆国内政への干渉も排除する。
当時は小国であった米国の保身策であり、内外に配慮していたのである。つまり、アメリカは、内戦(南北戦争)の余燼の沈静化に配慮する途上国であり、欧州諸大国に利用されないための自己防衛とも言える。
ことほどさように、安易な常套句の安易な転用は、支離滅裂になるのである。まして、理解度が人によって随分異なる聴衆や読者に、講演者の意図が通用しない可能性が高いのである。
案ずるに、石野氏ほど声望の高い大家に対して、子供に言い聞かせるようなダメ出しをしてくれる人は、どこにもいないのだろうと思うので、丁寧に書きだすのである。
と言うことで、ここに石野氏が語られたコメントは、場違い、見当違いで、いたずらに氏の名声を汚すものと言える。
的外れで無用な余談は、古代史には、いや、古代史に限らず蛇足(余計なだけでなく、ぶち壊し)である。
未完