今日の躓き石 「中国人の食」の迷訳 毎日新聞
2018/07/28
本日の題材は、毎日新聞夕刊の「旅・いろいろ地球人」なる連載コラムの「中国の食④」と題する読み物であるが、書き出し部分で躓いてしまった。
史記や漢書に「王以民為天、民以食為天」と記述されているのに対して、「王は民を最も大切なものと考え、民は食を最も大切なものと考える」と読み下した後で、いきなり、中国人は食を重んじる民族である、と大飛躍して、読者に私見を押しつけているのは情けないと思う。下手をすると、古来中国人は、食道楽に耽っていたと感じてしまいそうである。
史書に書かれている言葉は、確かに、当時東アジア全域で、唯一文化と呼べるものを持っていた中国の文化人の意見だろうが、当時、別に、他民族、例えば、インド人の文化を知っていて、インド人は食に執着しないと感じていたとか、東夷のものは飢餓を怖れていないとか、知った上で中国人の独自性を訴えたものではないはずである。
つまり、これは、古代における権力者たる王は、自分の食を心配する必要がないから、民を思いやることができたが、民は食うに事欠いているから、とにかく、どうやって今日、明日食べるかとばかり考えていたということであり、常に飢餓を意識しているものには、正義も悪もないということではないのだろうか。そもそも、太古の中国一般人は、礼節を教えられていないから、つまり中国文化を知らないから、王侯や士人の言う「天」は何か、知る由もなかったのではないか。
つまり、これは、中国人独特の「食」にこだわる国民性などと言うものではなく、凡そ、生きるためには食べるしかないという人の生存本能を言うものではないのかと思う。
以下、「食」にこだわる国民性が、中国風俗の根源となっているとして論じているようだが、記事の中心部になっているご高説が当を得ているかどうかは、生粋の日本人には何とも言いようがないのだが、冒頭に大きな誤解を書き立てていては、素人読者はそこで躓いてしまい、以下、どうにもついていけないのである。
以上
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