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2018年8月27日 (月)

倭人伝の散歩道 又々里数論、戸数論 3/3

                  2018/08/27 補充2020/12/20


*伊都国戸数
 伊都国はかって倭都であり、歴代国王が統治し、あわせて、遣使当時の女王国、すなわち倭女王の処となっている小国を統属したと見られる。王治であったために、戸数は少なく計上されているかも知れない。言うまでもないが、戸数は、必ずしも、それだけの「家」、あるいは、家族が実数としてあったという趣旨ではなく、税務、軍務などの負担能力を言うものである。

 古代に於いても、王治は特別の存在であった。多くの住民は、官員世帯あるいは補佐の官奴世帯であった。住民は、王治食糧供給の農業要員、あるいは、商工業の担い手であった。

 民の義務と言っても、「税務」としては、報酬を支払うべき存在であるから、徴税せず、「軍務」としては、王治防衛に必要な人員を既に常備兵としているので、徴兵せず、「役務」としては、道路整備、建物補修に駆り立れば運営に支障が生じるので、徴用せず、である。
 従って、伊都国の戸数に計上しないのである。また、伊都国の高官は、耕地と奴碑を私有し、不輸・不入の免税特権を持っていたので、これも戸数に計上しない。この辺りが、他国の不満を買った可能性は高い。

 とにかく、郡国志の要求する項目中、口数(人口)は記録されていないから、このあたりはあくまで推定である。

*幻の七万戸大国
 戸数論は、ついには、他の議論に波及している。「筑紫域内に諸国を比定した後に戸数七萬の大国が存在する余地はないから、かかる大国は、筑紫域外にあったとしか思えない」として、域外所在説の論拠になっているようだが、以上述べたように、これは筋違いの強弁で、根拠不明な仮説を頼りに曲芸を試みる事例である。これは、筋の通りっこない我流の史料解釈を押しつけるものであり、お里が知れる、みっともない言い方である。
 子供の口喧嘩の捨て台詞ならともかく、大人の議論で主張するのなら、ちゃんと筋の通った言い分を用意すべきだろう。

*倭人伝戸数の怪
 それにしても、東夷伝内でも、倭人の関係する戸数は、不釣り合いとみられる。

 中国史料に合わせ一戸五人程度の成人男子と見ると、七万戸には三十五万人程度となり、これは、十万人程度の軍事動員が十分可能ということでもある。あるいは、七万戸相当の食糧備蓄があると見られる。

 郡が東夷に戸数申告させた際に、誤訳でもあったかと思われる。各国戸数の多少は、倭諸国間の勢力評価には役に立ったろうが、それにしても、倭の戸数には、軍事大国の幻想がついて回る。

*国々の貌(かたち)
 奴国、伊都国、女王国などは、国王が統属したから、戸籍は整っていたのだろう。それ以外の国に派遣された一大率は、計数感覚と識字能力のある倭官僚であり、それぞれ、派遣元と報告・連絡・相談・指示の文書を交換して、各国の行政を指導したのだろう。
 そうしなければ、 国同士盟約を結んでも、後世に記録が残らないし、代替わりしても王統が維持されなければ、全て白紙となって、盟約の用をなさないのである。これは、遼東/楽浪/帯方郡が相手であろうと、魏帝が出てこようと、文字/文書が継承され、以下、代替わりしても、盟約が継続するという事でなければ、男の意味もないのである。と言うことで、蕃王一等任意寿を渡すのも、服従を継承させるための大事な形代なのである。

 国王のいない諸国では、統領は互選であったろうから、強制的に地籍図、戸籍簿を整えるができず、識字官僚を育てることもできず、先進国の指導が必要になったのだろう。言うならば、正確なデータに基づく徴税、徴兵、徴用でなければ、民の負担となる諸務が不公正、不安定となるので、天下太平を維持するためには、一大率の巡回指導、紛争仲裁が必要なのである。

*所感
 当方が素人考えで読解くのは、全て通じても二千字に及ばない小伝であるから、一字一字にこだわることもできるのである。

                           完

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